産業技術総合研究所と静岡大学はNEDOプロジェクトにおいて、バッテリーで駆動するロボットに搭載可能な、小型で軽量の高エネルギーX線非破壊検査装置を開発したと発表した。老朽化が進むインフラ点検の効率化が急務となる中、小型ロボットを活用した効率的なX線非破壊検査の実現に寄与する成果だという。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクトで、産業技術総合研究所と静岡大学は、バッテリーで駆動するロボットに搭載可能な、小型で軽量の高エネルギーX線非破壊検査装置を開発したと発表した。
日本国内には、高度成長期以降に建設された膨大な社会インフラや産業インフラがあり、それらを今後も安全で有効に活用するには、インフラ構造物の効率的な点検が必要とされている。こうした点検作業に活用されているのがX線を用いた非破壊イメージング検査だ。肉眼では見えないインフラ構造物内部の経年劣化状態を見ることができるメリットがあり、工場や発電プラントなどのインフラ構造物の主要な検査技術の1つとなっている。
しかしこれまでは作業員が手動でX線装置をセッティングして撮影していたため、検査に時間がかかっていた。また、インフラ構造物には膨大な検査箇所があるため、小型軽量でバッテリー駆動のロボットに搭載でき、しかも検査に十分な透過能力を持つX線非破壊検査装置の導入が求められていたという。
こうした背景のもと、2014年度からNEDOは「インフラ維持管理・更新等の社会課題対応システム開発プロジェクト」で、非破壊検査装置の研究開発を推進している。このプロジェクトで、産業技術総合研究所はこれまでカーボンナノ構造体を用いたX線源の研究を行うとともに、高エネルギーX線やガンマ線に対応した検出技術の研究に取り組み、静岡大学ではX線やガンマ線などの高エネルギー線用の高性能・高機能イメージセンサーの研究を進めてきた。このほど、これらの成果をもとに、両者はバッテリーで駆動するロボットに搭載可能な小型で軽量の高エネルギーX線非破壊検査装置を開発した。
同装置は、カーボンナノ構造体を用いた高エネルギーX線源と高エネルギーX線に対応した検出器からなり、1ショット0.1秒のX線を照射すると5cm(センチメートル)厚、複数ショットで7cm以上の厚さの鉄鋼部材の透過イメージングができる。また、X線源と検出器で5kg(キログラム)以内という小型軽量で、ポータブルバッテリーで駆動できるため、インフラ構造物などを検査するロボットに搭載すれば効率的な非破壊検査が可能になる。
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