劇場や音楽ホールに行った時、座席ごとの「見え方」が気になったことはないだろうか。大成建設はBIMデータを活用し、こうした座席ごとの見え方を数値指標として可視化するシミュレーション手法を開発した。最適な座席計画に役立つ手法として、自社案件での活用を進める計画だ。
大成建設は2016年11月7日、劇場などの設計において、「可視率」を用いて座席から舞台がどのように見通せるかを把握できる新しいシミュレーション手法を開発したと発表した。施設設計において最適な座席配置を行うのに役立つ手法だという。
劇場などの座席を設置する空間を設計する場合、空調、照明、音響などの室内環境や、観客の動線、歩行時の安全性の確保など、多様な要求水準が求められる。そのため複雑な3次元形状になる場合が多く、全ての座席から舞台までの見通しを把握することは難しかった。
こうした複雑な設計が求められる中、大成建設が最適な座席配置を行うために着目したのが可視率という指標だ。これは舞台上の演者などが、座席や手すりなどの視線を遮る障害物に隠れて全く見えない状態を0%、隠すものが無く全体が見える状態を100%とし、その座席から評価対象がどの程度見えるのかを示す指標となっている(図1)。
同社ではこれまでにも可視率を用い、計画する建物が周辺地域のさまざまな場所からどの程度見えているかなどを把握する景観・眺望シミュレーションシステムを開発し、建築計画に適用してきた。今回開発した見通しシミュレーション手法はこうしたこれまでの実績を活用したものだ。建築外観の景観評価に活用してきたシミュレーションシステムの機能を室内空間に適用することで、全ての座席からの舞台がどのように見えるかを客観的な数値指標として把握できるようにした。
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