通信性能については、電力線の状態に合わせる伝送路推定技術の導入やノイズキャンセル技術、多重化技術を組み合わせることで、ノイズの影響度を大幅に低減することに成功した(図2)。
規格化とマルチベンダー化については、国際標準規格「IEEE 1901」として認定を受けたことがポイントである。これにより、相互接続認証を行い、認証ロゴを発行。パナソニックがIPコアを開発し、LSIメーカーにライセンス提供を行うようになった。現在は「7社にライセンス供与している」(荒巻氏)とし、関連機器の年間出荷台数についても「現在は200万台程度」(同氏)としている。
さらに大きいのがマルチホップ中継機能である。従来のHD-PLCは接続機器の台数が14台程度にとどまっており、接続範囲が限られていた状況だった。しかしマルチホップ機能により、各機器で通信の中継が行えるようになり、通信範囲を大幅に拡大することに成功した。最大10ホップ、1000台の接続が可能になり、伝送範囲は従来は数十から100mクラスだったのに対し、数kmクラスの伝送が可能となっている。これにより、今までは一般家屋程度だったのを、ビルや工場丸ごとの通信環境を整備するような使い方ができるようになった。
「マルチホップ機能で大規模な施設の通信環境を、配線の手間なしに確保できるようになり、ビルや工場におけるIoTの土台として、活用できるようになった」と荒巻氏は述べている(図3)。
HD-PLCは現状では国内では規制が存在し、屋内および分電盤配下の敷地内の通信にしか活用できず、屋外での電力網では活用できない。ただ、海外では屋外でも利用可能な地域が多い。国内でも、電力線ではなく同軸線などでは、屋外でも使用可能だという。
こうした背景から現在は海外のインフラやビル向けの用途での導入や引き合いが増加しているという(図4)。「省線化や既存設備への通信機能の付加などの用途でニーズが増えてきている」(荒巻氏)
荒巻氏は「2020年には500億個ともいわれるIoT機器が世の中に生まれるといわれている。その中で、既存の配線を利用可能であることによる導入コスト抑制、通信の安定性、電力消費の抑制などにつながるHD-PLCは大きな役割を果たす。『線のあるところはHD-PLCで』を合言葉にIoTでの活用を広げていく」と述べている。
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