電力線を使って電力供給と通信のそれぞれが行える電力線通信「HD-PLC」。従来は家庭用などで利用されていたが、IoTを活用したスマートビルディングなどを求める動きの広がりから、ビル向けなどB2B用途での利用が広がりを見せているという。
パナソニックは2016年9月29日、電灯線を使って通信を行える電力線通信「HD-PLC」の技術発表を行った。
「HD-PLC」は通常の電力線を使って、通信を行えるという通信技術である。家庭などにあるコンセントに対応機器を接続するだけで通信が行えるということが特徴だ。HD-PLCは、2000年に開発がスタート。当初は部屋間の映像伝送を目指して開発が進められ、家庭向けでの利用を中心に考えて作られた。2006年に国内規制の緩和により、家庭向け製品が発売されたが、技術的な課題が存在したことや、Wi-Fiなどの普及もあったことで、大きく普及を伸ばすことができなかった。
ただ2010年にIEEEやITU-Tなどの国際規格認定を取得したことなどから、海外を中心にB2B用途での利用が拡大。特にビルなどにおける制御やスマート化などに活用する動きが広がりを見せてきた。
こうした背景から、B2B用途でのニーズに合わせ技術開発を強化。新たに「マルチホップ機能」などを加えたIPコアライセンスを提供するなど、IoT(Internet of Things、モノのインターネット)を背景とした新たな価値訴求を進めている。
HD-PLCには家庭向けとして提供してきた時からいくつかの課題があった。1つ目は電力と通信を1本の線で受けることから、電力の利用状況などで生まれるノイズなどにより、通信がつながりにくくなったり、通信速度が低下したりする現象である。さらに接続距離が短く、接続台数が少ない点などから、ビルや工場などの大規模施設では使いづらかった。また開発メーカーが限られていたことから製品の選択肢があまりないということも普及を阻害していたといえる。「こうした課題をカバーすべく、技術開発を進めてきた」とパナソニック AVCネットワークス社 技術本部 PLC事業推進室 室長の荒巻道昌氏は述べている。
課題の解決に向け、実現したのが「大幅な通信性能の向上」と「規格化とマルチベンダー化」と「マルチホップ中継機能」の3つの点である。
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