都市計画に欠かせない事前検証、これまでは模型や図面を元に行われてきたが、ICT(情報通信技術)の活用が不可欠な時代が迫っている。
ビル1棟の立て替えから駅前の大規模再開発まで「街が変わる」際には事前のシミュレーションが欠かせない。外観という見た目の問題だけではなく、人や車の動線、日照や通風など、建物が建つことで起き得る諸問題への対処は建設者の責任となるからだ。
国土交通省は2016年を「生産性革命元年」と位置付けており、建設作業に必要なあらゆるプロセスにICT(情報通信技術)を取り入れる「i-Construction」を推進している。前述の「街が変わる」プロセスにこのi-Constructionを適用するとすれば、3次元データによる都市計画の事前確認がその具体的手法の1つとして浮かび上がる。
ゼンリンが「第24回 3D&バーチャル リアリティ展」(2016年6月22日〜24日、東京ビッグサイト)にて紹介していた「3D都市モデルデータ」は、現実の街を3Dモデル化したFBX形式対応データを施工業者などへ提供することで、i-Constructionを促進するものといえる(図1)。
同社は地図製作会社として知られており、その地図データは紙や電子媒体における地図の他、カーナビゲーション向け地図データなどにも広く利用されている。紹介していた「3D都市モデルデータ」はもともとカーナビ向けを意図して、実際に自動車を使って撮影した画像データから作られている。
自動車が入れず車載カメラからの画像データが得られない路地裏は同社が所有する住宅地図データを使って補完し、現在は東京23区、大阪市全域、政令指定都市中心部の3D都市地図データを所有するに至っている。情報としては建物の高さ、形状、位置、テクスチャ、標高などが含まれており、基本的には625×625メートルを1区画として、FBX形式対応のデータ提供を行う。なお、データは基本的に年1回の頻度で更新される。
空撮からのデータを元に構成する都市モデルデータに比べ、実際に走行している車から撮影したデータを用いるため「街を行き来する人の目線」に即したデータとなっているのが大きな特徴。建物や道路はもちろん、樹木や標識、歩道も再現されているが、歩行者(自動車)からは視界に入らない、建物の屋上部分データは含まれていない。
このデータは都市計画を始めとした建設建築向けシミュレーションはもちろん、熱流体シミュレーションやゲーム開発などに利用でき、研究機関における防災シミュレーションに用いられた実績もある。
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