ビルなどのZEB化を実現する上で、空調エネルギーをいかに削減するかは大きなポイントだ。省エネ技術だけでなく、同時に室内の快適性が損なわれないことも求められる。日建設計総合研究所、大成建設、朝日工業社はNEDOプロジェクトにおいて、高い省エネ性能と快適性を両立する新たな業務用ビル液冷空調システムを開発した。
日建設計総合研究所、大成建設、朝日工業社は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプログラムにおいて、省エネと快適性を両立する新たな業務用ビル液冷空調システムを開発したと発表した。同システムは、従来、室内に出していた機器発熱を発生源で冷却するのが特徴で、年間空調エネルギー消費量80%以上削減できる可能性を示したという。
業務用ビルで「ZEB(ネット・ゼロ・エネルギービルディング)」を実現するには、空調エネルギー消費量の大幅な削減が必要になる。一般的なオフィスでは、PCや複合機などの機器発熱が室内に拡散する。これにより従来の空気空調機方式で室内空気を冷却するためには多く低温冷水が必要となることに加え、温度分布ができて室内温熱環境にばらつきが生じるため、快適性と省エネ性の面で課題があった。
今回新たに開発したビル液冷空調システムは、従来、室内に出していたPCや複合機などが発する機器発熱を、発生源で中温冷水で直接冷却して処理する。この液冷化システムや、回収温熱・太陽熱などの再生可能エネルギーを利用できる熱源システムなど、複数の新開発のシステムと、これらを最適に運転する管理システムも含めた統合空調システムとなっている(図1)。
開発要素を統合した実証試験とシステムシミュレーションでは、業務用ビル空調として一般的な空冷ヒートポンプ熱源と空調機システムによる空調と比較して、年間空調エネルギー消費量を80%以上の削減と、快適な室内環境の実現を確認したという(図2)。
NEDOでは2020年ごろをめどに、今回開発した業務用ビル液冷空調システムを組み込んだZEBの普及展開を目指す。さらに今回開発した技術は、データセンターや産業分野へも応用可能であり、さらなる省エネに向けた展開も期待できるとしている。
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