空調エネルギーを60%削減、新たな外気処理システムと断熱材を実用化へ省エネ機器(1/2 ページ)

竹中工務店がビルのZEB化に大きく貢献するとして開発を進めている「高効率調湿外気処理ユニット」と「高断熱ファサード」に実用化のめどがたった。2016年2月をめどに実用化する計画で、さらにこの2つを組み合わせたシステムを事務所ビルに構築し、空調の一次エネルギー消費量を60%以上削減できることを検証する。

» 2015年11月19日 07時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 年間に消費するエネルギー量がおおむねゼロになるビル「ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)」の普及に向け、政府は「エネルギー基本計画」の中で「2020年までに新築公共建築物で、2030年までに新築建物の平均でZEBの実現を目指す」という高い目標を掲げている。日本のエネルギー消費量の約3割はオフィスを含む民生部門が占めており、この中でも多くの電力を消費するビルをZEBに置き換えられれば、大きな省エネ効果が見込める(図1)。

図1 ZEBのイメージ 出典:NEDO

 ZEBの普及にはビルの省エネに貢献するさまざな要素技術の開発が必要で、現在、大手ゼネコンをはじめ各社が技術開発を進めている段階だ。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、そのうちの1社である竹中工務店がNEDOプロジェクトで開発を進めている「高効率調湿外気処理ユニット」と「高断熱ファサード」の開発にめどがたったと発表した。

空調のエネルギー効率を30%向上する「高効率調湿外気処理ユニット」

 現在多くのオフィスビルで使用されている空調システムでは、除湿を行う場合、空気を冷却して結露させることで水分を取り除いている。しかし結露させることにより空気の温度が下がってしまうと、当然ながら室内温度も下がる。もし室温を上げたい場合は、再び空気を加熱しなくてはいけないため、エネルギー効率は下がってしまう。

 これまでに竹中工務店は、温度と湿度を別々に制御することで、除湿のために過剰に温度を下げず、高めの温度設定でも湿度が低く快適に過ごせる「デシカント空調機」を開発している。しかし同空調機は大型のデシカント(乾燥材・除湿剤)ローターを回転させて除湿を行う仕組みのため、空調機器全体が大型になる。ビルで使用する場合は専用の機械室を設置する必要があるという制約があった。

 こうした課題をクリアする技術として、竹中工務店がクボタと共同開発を進めているのが高効率調湿外気処理ユニットだ。吸放湿モジュールが流路を切り替えるだけで吸湿と再生を繰り返すシンプルな構造により、機器の高さを450ミリメートルに抑えて天井内に設置可能なサイズを実現している(図2)。

図2 「高効率調湿外気処理ユニット」の概要。夏季に稼働した場合の空気の流れを示している 出典:NEDO

 この高効率調湿外気処理ユニットにより、従来の空調機を納める機械室が不要になり、既存建物のリニューアル工事にも対応しやすくなるというメリットがある。さらに吸放湿モジュールの冷却や再生に、地中熱や太陽熱など自然エネルギーを活用すれば、従来の空調に比べて外気処理のエネルギー効率を30%向上できるという。

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