BEMSアグリゲータ幹事会社が提供するシステムについて解説する特集の第8回。パナソニックESエンジニアリングが提供する「エコ見える化システム(BEMSバージョン)」について解説する。空調や照明を制御するというほかのシステムが備える機能だけでなく、コンピュータも制御して消費電力を削減するというほかにはない特長を持つシステムだ。
パナソニックESエンジニアリングが幹事会社として提供する「エコ見える化システム(BEMSバージョン)」は、パナソニック システムソリューションズ ジャパンが開発したもので、元々消費電力量をグラフなど多様な形で提示する「見える化システム」だったものに、BEMSとしての機能を追加したものだ。
対象とするビルは契約電力が50kW〜500kWと、BEMSアグリゲータ制度の対象とするビルの大部分となる(図1)。
BEMSとしての機能は、事前に設定した電力使用量に近づいてきたら空調機器や照明機器などを操作して、電力消費量を抑えるという基本的なもの。制御対象としてコンピュータが入っているところがほかにはない特長と言える。
例えばWindowsパソコンなら、遠隔制御でWindowsの電力設定機能を操作することが可能。節電設定に切り替えれば、一定時間操作していないパソコンのディスプレイの電源を切ったり、スリープモードに移行させることで消費電力量を抑えられる。
節電しにくいサーバも制御対象となる。Windowsサーバなら、電力設定を細かく操作して、処理能力を多少落としても消費電力を下げるということができる。OSとしてLinuxなど、Windows以外のものを使っているサーバの場合、必要に応じて電源を切ることで消費電力量を抑える。現在、パナソニック システムソリューションズ ジャパンはシスコシステムズと共同でこの機能の導入を進めているという。
パナソニック システムソリューションズ ジャパンは、一般的なビルにおける電力消費量を機器ごとに分けると、空調が30%、照明が40%、コンピュータとコンセントにつながる機器の合計で30%になると見ている。ほかのシステムでは空調の30%と、照明の40%しか制御できないが、エコ見える化システム(BEMSバージョン)ならそれに加えてコンピュータも制御対象とできるので、消費電力量抑制のための使える手段がかなり増えることになる。
エコ見える化システム(BEMSバージョン)では、ビル全体の消費電力量に加えて、分電盤の回路ごとに消費電力を計測する。計測データはデータセンターに送信し、データセンター側で集計、分析する。データセンターにWebブラウザでアクセスすれば、グラフなどの形で確認できる。
データの見せ方にも工夫がある。時間帯別、分電盤の回路別など、さまざまな方法でデータを分類して表示する。ビルの作りにもよるが、部屋ごとなど細かいエリアに分けて消費電力量を集計できるので、電力を無駄遣いしている場所が分かりやすい。
さらに、消費電力量を削減する計画を立てるときに役立つ機能も持っている。比率や値で削減量を指定すると、シミュレーションで消費電力削減量などのデータを提示してくれる。
例えば特定の回路に注目して、ここの消費電力量を数割抑制したらどういう結果が出るのかということを計算できる。シミュレーションの結果に応じて、回路ごとに電力消費量の目標値を設定し、その値を超えないように機器を制御させることも可能だ。
多数の拠点(最大1000カ所)にエコ見える化システム(BEMSバージョン)を導入すると、すべての拠点の消費電力データなどをデータセンターで集計する。管理者はすべての拠点の情報をまとめて確認することができる。小さめの建物を多数運営している企業に向く機能と言えるだろう。
ほかのアグリゲータが提供するBEMSと同様、電力需要が逼迫したときに対応する機能も備えている。BEMS導入時にユーザーと話し合って、非常時に停めても良い機器を決めておく。電力需要が逼迫しているという通知がデータセンターから届いたら、事前に決めておいた機器を自動で停止させて、電力消費量を大幅に抑える。
自動的に機器を止められては困るというユーザーには、手動で機器の運転状態を制御して節電に協力してもらうことになる。
自動制御と手動制御のどちらを選ぶかによって、受け取れる補助金の額が変わる。需要逼迫時の自動制御を受け入れれば、機器の価格の1/2に当たる補助金を得られる。自動制御を拒否し、手動制御を選ぶと補助金の割合は1/3になる。
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