本稿では、人工知能基本計画は昨今の急速なAI進化を踏まえ、2026年7月にアップデートしました。その中で触れられている「バーティカルAI」「フィジカルAI」「AX(AIトランスフォーメーション)」の概念について、土木分野の最新AI研究を交えて解説します。
2025年12月に閣議決定された「人工知能基本計画」が、2026年7月にアップデートしました。背景には、AIの推論能力「考える力」の高度化、「目と耳」にあたるマルチモーダルAIの進展、「AIがAIを創る」AIコーディングの実用化、さらにAIが自ら計画を立て、実行、検証、修正を繰り返すエージェント型AIなど、最近の急速なAI発展があります※1。
★連載バックナンバー:
本連載では、土木学会 構造工学でのAI活用に関する研究小委員会で副委員長を務める阿部雅人氏が、AIと土木の最新研究をもとに、今後の課題や将来像について考えていきます。
日本の「勝ち筋」も、「バーティカルAI」と「フィジカルAI」の実装による「AX(AI Transformation)」として具体的な道筋が示されています。また、日本の財産となる現場のデータを活用したAIの導入と開発の好循環を創出するため、バーティカルAIとフィジカルAIに加え、「AI for Science」を基軸として、推進する方針が打ち出されています。
そのバーティカルAIとは、どのようなものでしょうか?データ、モデル、アプリを垂直統合し、暗黙知を含めた現場のデータを活用した領域特化型システムとされています。これまでに見られた特定の問題を解くタイプのAIは、バーティカルAIと言えましょう。
下図は、多様なデータを統合的に利用して、橋梁(きょうりょう)床版の劣化を診断するエキスパートシステムの例です。1980年代に登場したエキスパートシステムは、バーティカルAIの典型と考えられます。
これまでの連載で取り上げてきたように、損傷や災害などの異常を検知/予測したり、都市の分析や人の行動を認識したりするAIなど、さまざまな土木に特化したバーティカルAIが実装されてきています。下図はその一例として、土の性質を表す「粒径加積曲線」を画像から求めるAIです。
実際のところ、ChatGPTなどの「基盤モデル」と呼ばれるAIが登場するまでのAIは、基本的に特定の問題を解くためのバーティカルAIだったと言えます。基盤モデルが登場すると、特定の問題に限らず、言語指示で一般的な会話や画像生成が可能となりました。
幅広く一般的な問題が扱える基盤モデルが“ホリゾンタル(水平的)”とすると、各分野特有のデータや専門知を持つAIは“バーティカル(垂直的)”と捉えられるようになりました。具体的な現場や業務に結びついたバーティカルAIによって、経験や知識を集積することで、日本の強みを引き出していけるものと期待されます。
下図は、マルチモーダルAIを用いて、図面から橋の3Dモデルの矛盾点を自動修正しながら構築するAIです。
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