活用場面は、発注者との完成イメージの共有にとどまらない。「大成建設グループ次世代研究所」の建設では、スイッチなどの位置関係を確認する「総合図確認会」で活用した。室内の壁色を検討する際に、複数のカラー案を切り替えながら確認したこともある。
駅舎のプロジェクトでは、工事段階ごとに変わる通行ルートの確認に使った。通行ルートの変化が駅利用者の通行や視認性に与える影響を事前に検討した他、電車の運転士目線で、ホーム上の足場や仮設物が運行の支障にならないかを視認する機能も追加した。
庁舎の建設現場では、市民向けの現場見学会に用いた。仕上げ材がまだ施工されていない現場を見学してもらいながら、ノートPC上で完成後のメタバース空間を操作できるようにした。他にも、学校施設でPR用動画の背景素材として利用した事例がある。さらに、バーチャル空間プラットフォームを提供している企業のクラスターと連携し、より多人数が参加できるオンラインイベントでのメタバース活用に向けた実証実験(PoC)も進めている。
一方で、合意形成の場での使い方は明確に絞り込んでいる。一般的なメタバースでは、複数の参加者がそれぞれのアバターを動かすイメージがある。しかし、建設承認メタバースでは、アバターを1体に限定した。
打ち合わせでは、最終的に確認すべき箇所を参加者全員で同じ視点から見ることになる。そのため、視点を1つに絞り、別々の場所から共有できる仕組みとした。3D空間そのものを目的化せず、同じ対象を見ながら認識をすり合わせることを優先した仕様だ。
建設プロジェクトでは多くの関係者が関わる。打ち合わせ内容を議事録として残し、後から確認できる状態にしておくことは合意形成に欠かせないが、その作成は現場にとって負担にもなっていた。
こうした課題に対応するため、大成建設が採用したのが、AI議事録サービス「Rimo Voice」だ。メタバースシステム上の会議ツールとRimo VoiceをAPIで連携し、作成された議事録や動画を所定の場所に自動格納する。作業所側で議事録や録画データを整理し、保存する手間を減らし、エビデンス保管の仕組みとして運用できるようにした。
川瀬氏は「建設業法上、発注者との工事内容に関する打ち合わせ記録などは、営業に関する図書として10年間の保存が求められる。議事録や動画が自動で格納されれば、作業所側の手間も抑えられる」と利点を強調する。
大成建設は2023年11月ごろからRimo Voiceの導入に向けて動き始め、東京支店限定のスモールスタートを経て、全体展開へとつなげていった。ツール選定で重視したのは、現場での使いやすさだった。「建設現場では、全ての人がITリテラシーに長けているわけではない。できるだけ簡単に使えるツールでなければ、業務に定着しない。その点で、Rimo Voiceのユーザーインタフェースは優れていると感じた」と川瀬氏は選定理由を語る。
Rimo 事業戦略本部長の佐伯直行氏は、Rimo Voiceの特徴として、使いやすさに加え、精度とセキュリティを挙げる。「議事録サービスは、文字起こしの精度が実務で使える水準にあるかが重要だ。導入時の比較でも評価いただいた。また、議事録には会社の秘匿情報が多分に含まれるため、情報漏えいなどへの備えも大切だ。Rimo Voiceでは、データをAIに学習させず、日本国内で保管するなど、サイバーセキュリティを考慮している」と解説する。
Rimo Voiceの主な利用場面は、施工段階の定例会議だ。定例会議の議事録は現場ごとに書式が異なり、初回の定例会議で発注者や設計事務所と形式を決めることが多い。そこで大成建設は、各現場の定型書式に合わせて、議事録を書き出せるようにRimoへ要望。Rimo側では、各現場のExcelフォーマットに合わせて出力できるようにAIの設定を調整した。
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