そもそも、BIMとは国土交通省の定義によれば、PC上で作成した3次元データに、室などの名称や面積、材料や部材の仕様など建築物の属性情報を付与した建築情報モデルを指す。情報を統合することで、ワークフロー/プロセスそのものの改善に主眼がある。
属性情報を内包するBIMデータを活用することで、建設生産プロセスのさまざまな段階で、シミュレーションやセキュリティプランニング、図面作成、リスト類の作成、CGによるビジュアライゼーションなどの幅が広がる。
しかし、猪里氏は「現在でも十分に活用できてはいない。全てを実現しようとすれば、かなり詳細なBIMモデルが必要となるため、難しい」と現状を分析。その上で、FM分野のBIM活用では、「BIMモデルの中にある部材や部品の位置情報などが業務に役立てられるのではないか」と指摘。建物の属性データを取り出して一覧表(データベース)にすることで、必要な点検項目やメンテナンス周期などを割り出し、今後の維持管理の計画やコスト計算も可能になるとした。
ただ、そうしたFM領域での可能性は始まりつつあるものの、猪里氏は「その先に、建物のオーナーへBIMの有効性を訴求するのが今後の課題だ。集客への利用やランニングコストの可視化、事業計画への応用などのメリットを研究部会での検討する必要がある」と訴えた。
建設生産の各プロセスや多様なステークホルダーで利用が広げるため、BIM・FM研究部会では、BIMデータ活用の環境整備にも力を入れている。直近の2025年には「ファシリティマネジメントのためのBIM要件定義」を策定。発注者がBIMに何を求めるかを明確化し、FMで必要となる情報を盛り込んだデータが作られるようにマニュアル化/標準化した。
2026年4月から、BIMデータから出力したPDF図書を提出するBIMによる建築確認申請の最初のステップとして、「BIM図面審査」が始まる。その次のフェーズで2029年4月には、BIMデータそのものを審査対象とする「BIMデータ審査」へと深化し、改めて業界全体でBIM導入に向けた動きは活発化する見込みだ。
猪里氏は「BIMデータで審査が開始されることで、BIMを使う環境は大幅に整備されるはず。環境が整えば、運用段階でもBIM活用の輪が広がっていくことが期待される」と指摘する。
こうした中で、JFMAもメンバーとして参加している国土交通省の「建築BIM推進会議」は、建物の企画・計画から設計・施工・維持管理/運用にわたって建物の有効な活用について助言する「ライフサイクルコンサルティング」という新しい職能の必要性を提唱している。BIMのライフサイクルコンサルティングは、3Dデータを一気通貫で活用して業務効率化を図るBIM本来の意義や活用を実現する役割だ。猪里氏は「建物の計画段階から関わるファシリティマネージャーの立場と重なる部分は多く、これからの時代には欠かせない存在となるだろう」と語った。
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