SynQ Remote導入で、ベテラン技術者は複数現場を同時に担当できるようになる。2025年問題とも言われる豊富なノウハウや経験を有する人材の退職が迫る昨今、SynQ Remoteは人材不足による業務停滞、さらに工期遅延への影響を最小限にとどめるITツールと成り得る。
簡単に使えるビデオ通話サービスとしての基本機能はそのままに、より使い勝手を高める新機能として、画質優先モードと留守録を追加した。
画質優先モードは、山中や地下といった通信環境が悪い場所でも高品質の映像を維持する。これまでも、電波状況が良い場所であれば、画面の動きが滑らかで細部まで明瞭に識別できる映像の送信は実現していたが、通信が不安定だと画像が荒くなってしまう。その部分を改善したのが、画質優先モードだ。
画質優先モードは、SynQ Remoteの画面右上からいつでも、ON/OFFを双方向で切り替えられる。通信環境に難がある場所で、互いに画質を合わせて点検する時に便利な機能となる。
もう一つの留守録は、チャットを残せる機能だ。相手がSynQ Remoteの呼び出しに出られなかった場合、伝えたいことをポインターの動き付きの録画で残せる。現場にいると、タイミングによっては電話やSynQ Remoteの着信に出られないことがある。留守録機能があれば、写真や動画で伝えたかったことを記録できるため、再度の連絡や現場を離れた後に折り返すなどの手間がなくなる。
相手が対応したのかどうかを示すステータスも確認可能だ。残したメッセージに対して進捗が分かるので、タスク管理にもなる。
次の展開について代表取締役CEO 下岡純一郎氏は、「公共工事の遠隔臨場にも対応する電子黒板を自動作成する機能を開発中。また、タブで写真を管理し、工事の場所や日付を使って必要な写真を探し出せる検索機能の搭載も検討している」と説明する。
展示会後、直近のアップデートでは2025年9月末に、SynQ Remote上のやり取りをAIで文字起こしするAI議事録を実装した。現場での会話や共有情報を追加の操作をしなくても、自動的にテキスト化して要約し、報告項目別に情報整理する。話者ごとに発言も識別し、写真や動画もどの指示で撮影したか分かるように、自動で発言と時系列で関連付けられて表示する。
また、会話の中から重要キーワードを自動抽出するため、「配管」「安全確認」などの抽出したキーワードをクリックすると、録画の該当部分に瞬時にアクセスできる。ゆくゆくは、通話内容を各社運用フォーマットにカスタマイズできる報告書に、自動変換することも可能になるという。
SynQ Remoteは、現場仕事に特化したビデオ通話サービスとして、建設関係ではゼネコンやサブコン、ハウスメーカーがメインユーザーとなっている。ゼネコンでは、施工管理業務で現場監督と職人などとのやり取りで多く利用されている。ハウスメーカーでは施工管理の他に、2024年4月に国土交通省が建築基準法に基づく完了検査の遠隔実施に関わる運用方針を発表したことも影響し、監査時の管理でも活用されている。
最近では、ロボットのメンテナンスや電設系現場での導入が増えていると話す下岡氏は、SynQ Remoteが普及している理由を「ポインターとかで双方向に視覚的に書き合えるツールが他にあまりない。IDの登録も不要で、QRコードを読み込むだけで使える利便性が評価されている。独自の画質処理で通信環境が悪い建設現場でもきれいな画質を保てる点も支持されている」と分析する。
今後の事業展望を下岡氏は、「今後は水道や電気などに代表されるインフラ系、鉄道、行政、産業用機器などの領域にも進出したい。SynQ Remoteの最終目標は、単にビデオ通話を提供するのではなく、少ない人数で多くの現場を品質を落とさずに回せる体制の構築にある。その1つの機能で、自然言語に対応したAI活用により、現場の疑問に応えられるベテランの代替となるようなサービスも提供していきたい」と語った。
その一例として、下岡氏はブースでSynQ Remoteの映像や会話の内容をAIが認識し、不具合への対応を表示するまでを実演した。クアンドが先に見据える体制とは、技術やデータなどがナレッジとして集まり、1人の作業員が複数現場に対応できる「CoE(Center of Excellence)」だ。実現すれば、属人化した技術に頼らずに現場が回せるようになる。下岡氏は「ビデオ通話は、映像と会話でデータを蓄積していき、ナレッジのもととなるCoEに向けた第一歩だ」とした。
メンテナンス・レジリエンスTOKYO2025:5G×AIでインフラ老朽化問題を解決 NTTドコモが示す現場DXの実装モデル
現場管理:360度カメラとクラウドを自動連携、リコーがスマホ不要の新パッケージ提供
BAS:ビル設備メンテ時のAI映像解析とナレッジ活用で危険検知、日立がNVIDIAとの協業でBuilMiraiに新機能
スマートビル:ロボットが天井照明から自己位置を特定、パナソニック EW社とugoがオフィス検証開始
スマートメンテナンス:既存の通信光ファイバーで地中空洞化を推定、NTTと産総研が実証
ドローン:ドローン遠隔運航サービスとBizStackが連携 撮影データを自動整理し、一元管理Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
人気記事トップ10