連載第8回では「空虚化する“フロントローディング”の根本原因」というテーマで、「BIM活用の本当の受益者は誰か」の問いかけから発注者(施主/オーナー)の責務や役割についてスポットライトを当ててみた。今回は、野原グループが2025年5月に発表した発注者(施主/オーナー)に対する調査結果などを引用しながら、現状認識の深掘りと理想論ではない実現可能解について考えていきたい。
下図は、発注者(施主/オーナー)にとっての「建設工事を取り巻く危機感の要因」についての調査結果だが、建設コストの増大(労務費、材料費、物流費)への危機感は相当なもので、悲観している実情が露わになった。
建設QCD(Quality/品質、Cost/原価、Delivery/工期))の“C”は上昇傾向が続くことは間違いないが、多少なりとも改善させるためにも“Q/D”のコントロールが重要になる。そこで「建設プロジェクトの品質と計画通りの実行に必要なこと」という質問に対しては、下図のような回答が寄せられた。
★連載バックナンバー:
『建設産業構造の大転換と現場BIM〜脇役たちからの挑戦状〜』
本連載では、野原グループの山崎芳治氏とM&F tecnicaの守屋正規氏が共著で、BIMを中心とした建設産業のトランスフォーメーションについて提言していく。設計BIMについては語られることも多いため、本連載では施工現場や建材の製造工程などを含めたサプライチェーンまで視野を広げて筆を進める。
BIM活用による建設プロセスの根本的な見直しや慣習打破、その中での早期の合意形成など、まだ十分な認知理解が進んでいるとは言い難い数字だが、“フロントローディング”への関心は高まりつつあり、場合によっては設計変更に費用を払うべきという意見も出ていることは今後の光明といってもいいかもしれない。
国の施策として目指している「2030年までにBIMを活用した業務プロセスの定着」に向け、建設産業全体で一段とギアを上げていきたいところで、全体最適のために受注者は毅然とした態度で発注者にモノ申してもらいたいし、その代わりに受注者を筆頭に建設産業全体で血眼になって生産性向上に取り組むべきだ。その相互作用や取り組みが一枚岩になることが、日本の建設業の継続可能条件となるだろう。
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