トンネル全体を電波暗室化、切羽全面で使用できる無線発破システムを確立 戸田建設：山岳トンネル工事

戸田建設は、トンネル全体を電波暗室化することで、切羽全面で使用可能な無線発破システムを確立した。

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　戸田建設は2025年6月27日、イーピーシージャパンの協力を得て、トンネル全体の電波暗室化に成功し、切羽全面で使用可能な無線発破システムを確立したと発表した。西日本高速道路発注の「新名神高速道路宇治田原トンネル東工事」の現場で、無線通信試験と非火薬破砕剤による無線起爆試験を実施し、システムの安全性と有効性を実証した。

無線発破システムの概要と試験状況出典：戸田建設プレスリリース

　新システムは、無線起爆装置と電波遮蔽体から成る。無線起爆装置にはAutoStemの「AutoShot」を採用。無線発信機が送信するUHF帯の起爆用信号を、中継機を介して起爆用の爆薬（親ダイ）に取り付けた受信機へ伝達して起爆する。起爆前に受信機が確認用信号を受け取ると、LED表示が点滅から点灯に変化して通信状況を視覚的に把握できる。

　電波遮蔽体には、坑口付近に設置した防音扉を活用。アースの取り付けなどにより坑内外の電波伝播を遮蔽する。UHF帯の電波は地盤内を通過しない特性があり、トンネル全体が電波暗室として機能する。

　現場実証では、切羽全面に受信機を設置して確認用信号が受信できることを確認。非火薬破砕剤を使用した無線起爆試験では、中継機を通じて、切羽から約160メートル離れた切羽を見通せない位置からの起爆に成功した。電波遮蔽体外側付近での電波の電界強度に関しては、起爆時の上昇量は計測下限値以下で、電波法で制限を受ける値を下回り、坑外の一般の通信機器に影響を及ぼさないことを確認した。

無線起爆試験時の機器配置出典：戸田建設プレスリリース

電界強度計測状況 出典：戸田建設プレスリリース

　戸田建設は山岳トンネル施工の安全性や生産性の向上に向けて、一連の作業を遠隔化／自動化する「ToP-NATM」の開発を進めている。発破作業の遠隔化／自動化の技術開発もこの一環。今後は、新システムを使用して、山岳トンネルの発破で通常用いられる含水爆薬起爆を実施する計画だ。また、原材料が非爆薬で自動化機械での扱いに適した現場製造バルクエマルジョン爆薬などとの組み合わせによる、発破作業の完全自動化も目指す。