戸田建設は、自律飛行ドローンを活用した切羽自動監視システムを開発し、施工中のトンネルでの技術検証に成功した。今後は自律飛行時のフェイルセーフ機能や精度の向上を図りながら試験運用を進め、2025年度中の本格運用開始を目指す。
戸田建設は2025年1月29日、自律飛行ドローンを活用した切羽自動監視システムを開発したと発表した。施工中のトンネルでの技術検証に成功し、トンネル工事における切羽観察作業の自動化を実現した。今後は坑内での自律飛行時のフェイルセーフ機能の向上を図ると共に、精度向上や試験運用を進め、2025年度中の本格運用開始を目指す。
新システムは、屋内特化型のドローン自律飛行システムを開発するSpiralと、DXサービス事業を展開するGreenBeeの協力を得て開発した。GNSS利用ができない環境でも自律飛行可能な「非SLAM型自律飛行ドローン」に、切羽検知機能とAIによる切羽評価機能を付加し、切羽観察の一連の作業を自動化する。
自動化システムは、現場技術員が直観的に操作できる「切羽検知アプリ(MFA-Tracker切羽モード)」と、メンテナンスフリーの充電ポートから成る。
切羽検知アプリは、事前に登録した飛行計画からドローンに適切な飛行を指示する「飛行計画モード」、ドローンのリアルタイムな飛行ルートやストリーミング動画を確認できる「ライブビューモード」、対象の切羽測点を入力するだけで適正な位置から切羽写真を自動撮影する「切羽検知モード」、撮影した写真からAIが評価に適切な写真を自動検出する「画像検出モード」で構成。これにより、重機類を避けて飛行する「障害物回避機能」や、掘削の進行に伴い日々移動する切羽位置を認識するための「切羽の自動検知機能」を持たせた自律飛行が可能になった。
充電ポートは、待機や充電中に自動的に防塵(じん)/防水/冷房搭載のキャノピー(ドローン格納ボックス)が閉まり、ドローンの状態を保護する。着陸時にはドローンの位置を適正にするポジションパッド、脚を挟み充電するドッキングパッドを組み合わせて自動位置調整と自動充電を行う。
施工中の山岳トンネルでの技術検証では、ドローンの自律飛行システムを使用し、飛行安定性と画像取得、AIによる切羽評価まで含めた一連のシステムについて効果を検証した。その結果、充電ポートからの自律離陸、トンネル坑内で撮影をしながらの障害物回避、適切な位置での切羽撮影、充電ポートへの帰還まで、完全自動運用ができることを確認した。
さらに、AIによる数百枚の切羽写真からの適切な写真選定と評価ができることも実証。従来2時間程度を有していた撮影から切羽の評価(帳票作成)までの作業時間を、合計17分(写真取得6分、データアップロード1分、切羽AI評価システムによる評価と帳票作成10分)に短縮することに成功した。
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