空間設計の主役となるLEDスポットライト パナソニックEW社の「モノ売りからコト売りへ」ライティングデザイン(2/3 ページ)

» 2025年05月30日 08時29分 公開
[松永弥生BUILT]

従来のTOLSOには照明設計の上で3つの課題があった

 メリハリ照明の中核を担ってきたのが、従来型のTOLSOスポットライトだ。TOLSOは店舗向けに開発された製品で、商品やマネキンなどの対象物をピンポイントで魅力的に照らす用途に使われてきた。しかし、用途をオフィスに拡張する中で、3つの課題が顕在化した。

1.均斉度の不足

 第一に挙げられるのは「均斉度」。均斉度とは、照射面での明るさのムラの度合いを示す指標で、低いと視覚的負担が大きくなる。従来のTOLSOでは、中心部の照度が高く周辺部が暗くなる傾向があり、机上面に光のムラが生じ、目が疲れやすいという声があった。

手前のデスクは従来のTOLSOで照らされており、四隅が暗くなっている 手前のデスクは従来のTOLSOで照らされており、四隅が暗くなっている 筆者撮影

2.デザイン性と施工性の制約

 第二は「デザイン性と施工性」。従来のTOLSOは、器具本体と電源ユニットが分かれていたため、設置の際に天井に大きなボックスが露出する格好となり、内装デザインを損ねるとの指摘があったそうだ。とりわけ、スケルトン天井のような開放的な設計を採用しているオフィスでは、この点がネックとなっていた。

右が従来のTOLSO。電源ユニットが外部に出ている 右が従来のTOLSO。電源ユニットが外部に出ている 筆者撮影

3.コストパフォーマンスの課題

 第三は「コストパフォーマンス」。配光角度が狭く、1台で1席しか照らせない設計だったため、必要台数が多くなり、初期導入コストがかさむ傾向にあった。

従来スポットライトに残る悩みと原因。その打開策 従来スポットライトに残る悩みと原因。その打開策 提供:パナソニック エレクトリックワークス社

TOLSO+の3つの進化

 3つの課題に対し、TOLSO+ではそれぞれ対応する機能をアップデートして解決を図った。

 均斉度では、配光性能を見直し、広角49度の配光を実現して中心照度と周辺照度の差が大幅に縮小した。従来モデルは中心照度1700ルクス、周辺照度300ルクスだったが、TOLSO+は中心700ルクス、周辺400ルクスとなり、均斉度は0.2から0.6へと改善した。この結果、作業面全体に均一な明るさを提供でき、視覚的なストレスが軽減されている。

デスクをムラなく照らす、均済度の高い配光を実現 デスクをムラなく照らす、均済度の高い配光を実現 提供:パナソニック エレクトリックワークス社
手前が従来のTOLSO。TOLSO+で照らした奥のデスクは四隅まで明るい 手前が従来のTOLSO。TOLSO+で照らした奥のデスクは四隅まで明るい 筆者撮影

 デザイン性と施工性の制約では、電源一体型の製品設計とした。従来は本体とは別に大きな電源ボックスが必要だったが、電源を本体に内蔵することで天井面のすっきりとした仕上がりを実現した。筐体体積も約25%削減し、デザインコンセプト「アーキデザイン」の下、水平/垂直を基調としたシンプルで美しい外観を採用している。オフィスで実機を見た際は、視界のノイズが抑えられ、空間全体がより洗練された印象だった。

TOLSO+と、TOLSO+をスケルトンにした参考モデル。電源を本体に収めスッキリした外観に TOLSO+と、TOLSO+をスケルトンにした参考モデル。電源を本体に収めスッキリした外観に 筆者撮影

 コストパフォーマンスについては、配光性能の向上と高均斉度化で、1基で2席をカバーするようにした。同じ照度条件での照明台数が半減し、イニシャルコストの圧縮につながっている。従来のシステムでは約194万円だった器具代が、TOLSO+では約167万円へと抑えられている。ランニングコストも年7.6万円から6.4万円へと低減。長期的な視点でみると、TOLSO+は経済性にも優れた新たな選択肢となった。

TOLSO+によるメリハリ照明の進化 TOLSO+によるメリハリ照明の進化 提供:パナソニック エレクトリックワークス社

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