“使える建設DX”とはBIMを核とする「アプリ連携型」 高砂熱学に実装したArentの提言メンテナンス・レジリエンスTOKYO2024(2/3 ページ)

» 2025年05月29日 09時28分 公開
[加藤泰朗BUILT]

EPR型の限界とアプリ連携型の利点

 アプリ連携型アーキテクチャの最大の利点は、その柔軟性にある。目的に応じて必要なツールだけをつなぎ、順次追加や拡張ができる。建物の維持管理で中央監視システムとの連携が求められる場面でも、専門ツールを後から接続すれば比較的容易に対応可能だ。

 建設業界の多くでは、今でもスクラッチ開発に頼ったシステム構築が一般的だ。SIerが数年おきに再構築する体制は、初期コストや開発期間が掛かるだけでなく、システムの複雑化や老朽化を招きやすい。担当者の異動や退職でノウハウが失われると、更新や改善が滞る。

ERP型システムのデメリット ERP型システムのデメリット

 鴨林氏は、「市販SaaSを使えば対応できる領域にもかかわらず、全部を内製化しようとする企業はまだ多い。その結果、開発は終わらず、運用負荷とコストだけが膨らんでいく」と警鐘を鳴らす。

 柔軟性と持続性を両立させるためにも、システムのつくり方そのものを見直す必要がある。そのために必要なのが、BIMを中核に据えた業務データの連携だ。

BIM活用とアプリ連携の融合

 鴨林氏は、建設、不動産、維持管理分野でのBIM活用を“業務基盤の再定義”という観点から捉え直す。

 建設業では長らく2D図面が中心だったが、それは人間の認識力に頼る情報であり、システムやAIにとっては処理しづらい。BIMに置き換えて、柱や壁、窓といった要素に寸法、素材、価格などの属性を持たせることで、建物を構成する“構造化されたデータ”として扱えるようにする。

 「BIMモデルを中核に据えることで、設計・積算・施工・維持管理まで一貫した情報活用が可能になる。図面や集計表も自動生成でき、施主への3D提案も容易になる」と鴨林氏は説明する。

 ただ、現状のBIM活用は限定的で、国土交通省の調査でもプレゼンテーションとしての利用にとどまるケースが多い。最大の課題は、設計段階での属性入力作業の負荷が高く、現場での運用に結びついていないことだ。

 こうした現実を踏まえ、ArentではBIMモデル作成の自動化/省力化に取り組んでいる。「設計フェーズで正確なBIMを整備すれば、施工・維持管理の業務は効率化できる」とし、BIMを“共通言語”として業務プロセス全体に流通させる構想を示した。

鴨林氏が考える建設業界が目指すべきBIMを中核に据えたアプリ連携型システムのイメージ 鴨林氏が考える建設業界が目指すべきBIMを中核に据えたアプリ連携型システムのイメージ
BIMを中核に据えることで業務改善が期待されるケース BIMを中核に据えることで業務改善が期待されるケース

 こうした情報の流れを支えるのが、前述のアプリ連携型アーキテクチャとなる。BIMを中核に最適なツールをつなぎ、全工程を貫くデータ活用を可能にすることが、Arentが描くあるべき建設DXの姿だ。

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