建設業界の業務は、熟練者の属人化している知見や経験に依存している割合が大半。今後、2025年に訪れる熟練者の大量退職によって、これまでに蓄積された暗黙知が失われる可能性が極めて高い。AI×建築設計の領域に特化したスタートアップ企業のテクトムが開発したAIサービス「Tektome ストレージ」は、言語化できない建築設計のノウハウをAIで発展的活用ができる構造化データに変換する。
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建築設計×AIに特化して2020年に創業したテクトムは、「Archi Future 2024」(会期:2024年10月24日、TFTホール)のテクニカルフォーラムで、「【生成AI/GPT】過去図面を活用した設計効率化と人材育成」をテーマに代表取締役社長を務める北村尚記氏が講演した。
テクトムは生成AIを通じて建築設計データの加工、自動設計、品質チェックをサポートする建築設計AIプラットフォーム「Tektome(テクトム)」を提供している。プラットフォーム上には、「ストレージ」「PDF解析/変換」「法規/要件管理」などのサービスが紐づく。
このうち今回の講演で北村氏は、非構造化データを構造化データに変換し、その後に検索や生成AIでの利用を効率的にできるようにする「ストレージ」を中心に解説した。
建設業界の若手が仕事を覚える過程では、先輩の仕事を見て真似たり、熟練者に質問したりが一般的だった。しかし、こうした方法はシステム化されておらず、ノウハウや知見の共有で課題が多かった。
長い間に経験を積み重ねて熟練者が習得した技術ノウハウや知見は、その熟練者のみが保有しているため、退職や引退によって容易に失われてしまう。そのことは企業にとって大きな損失になることは間違いない。
AIソリューションの「Tektome ストレージ」は、建築設計のデータと熟練者のノウハウを反映したデータベース構築をサポートする。データベースがあれば、業務で疑問がある若手社員は検索して必要な回答やヒントを見つけられる。熟練者が退職しても、ノウハウが企業側に残り、将来にわたって活用できる。
ただ、課題がないわけではなく、現時点でも建築設計の建設会社には膨大な過去データが保管されている。問題なのは多くが検索やAIからの利用に適さない“非構造化データ”なことだ。
非構造化データとは、BIMではない2次元図面をはじめ、PDF、Word文書、写真(画像)などの形式で保存されているデータを指す。建築設計の業務で日常的に使われるデータの大部分が非構造化データに該当する。非構造化データは、作成や管理のルールが不統一のまま保存されていることが圧倒的に多い。そのため、そのままでは2次利用や発展的活用などデータの価値を利活用できていない。
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