人手不足に追い打ちをかけるように、2024年3月末には時間外労働の上限規制で、建設業に特例的に設定されていた猶予期間が終了した。いわゆる建設業の“2024年問題”により、就労時間が制限されることになり、言い換えれば足りない労働力を労働時間で補えなくなったことを意味する。
建山氏は、「建設業の労働力不足に対処する方法は2つしかない」とし、少ない人数でも今まで以上の仕事ができるようにする生産性の向上と、建設業で働く人を増やす産業への転換だ。
生産性の向上について建山氏は、スウェーデンとフィンランドでの建設ICT活用の例を紹介した。両国は日本とほぼ同じ国土面積を持つが、人口ではスウェーデンが日本の10分の1、フィンランドは20分の1しかない。にもかからず、少ない労働力を前提に建設の仕組みを再構築して建設産業を回している。建山氏は「日本でも、すぐには無理だと思うが、移行していくことは十分可能だろう」と語った。
日本の建設業は、製造業に比べて労働生産性が低い。建山氏は、その原因を「建設投資が減っていくときに、企業や労働者の数がさほど減らない時期があったので、小さなパイを多くの人で分け合って仕事をしていたためだ」と説明する。
建設業のこのような低い生産性を高め、ポテンシャルを生かす産業に生まれ変わらせる指針の起点となったのが、国土交通省が2016年に2025年度までに2割の生産性向上を掲げてスタートした「i-Construction(アイコンストラクション)」だ。2022年3月には、AIに代表される建設関連の技術が進化を受け、国交省は「インフラ分野のDXアクションプラン」を発表し、次のフェーズに入ったことを宣言した。
2024年には、2040年度までに少なくとも省人化3割、1.5倍の生産性向上に再設定した「i-Construction 2.0」を公表している。i-Construction 2.0では、これまでの道筋を踏まえつつ、建設ICTの活用を軸に「施工のオートメーション化」「データ連携のオートメーション化(デジタル化/ペーパーレス化)」「施工管理のオートメーション化(リモート化/オフサイト化)」を3本柱としている。
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