芝浦プロジェクト全体のスケジュールは3つのフェーズに分けられる。S棟工事期間の2024年末までを第1フェーズ、S棟の開業と浜松町ビルを解体してN棟を建設する2025年から2030年末までを第2フェーズ、N棟が完成し街区全体のまちびらきを行う2031年以降を第3フェーズと設定している。
野村不動産とJR東日本が2022年5月に開いた記者発表会では、都市と空や海などの自然が交わる芝浦という立地が持つ特性を生かし、人も社会もウェルビーイングになるという方向性を示した。さらに、働き方や働く環境に求められる価値観が変化した時代に合わせた新たな働き方「TOKYO WORKation(トウキョウ ワーケーション)」の提案、運河側の親水空間や駅からの緑道整備、ラグジュアリーホテルブランド「フェアモント東京」の日本初出店や、S棟への野村不動産グループの本社移転を公表した。
今回の記者会見ではプロジェクトの進捗について、野村不動産の松尾氏が説明に立った。松尾氏はまず「東京では国家戦略特区の規制緩和などにより大規模複合開発が継続中だ。築地や内幸町の開発、晴海を中心とする湾岸の住宅街、さらに南側の高輪ゲートウェイシティといった都心の主要な開発案件に、芝浦プロジェクトは囲まれている」と都内の再開発の現状を説明した。
続けて、浜松町駅周辺エリアの開発に関して「浜松町エリアでも3つの地区で開発が進んでいる。2020年には竹芝地区で東京ポートシティ竹芝とウォーターズ竹芝が開業。これを皮切りに、2025年に芝浦プロジェクトの1棟目の竣工、2029年度には浜松町西口エリアで世界貿易センタービル街区の完成、2030年度には芝浦プロジェクトの全体完成が予定されている。この10年で大きく変貌を遂げていくエリアだ」と紹介。3地区の事業者が連携し、浜松町駅周辺エリアで、にぎわいの創出や回遊性の向上を図る取り組みを進めていると紹介した。
また、東京のベイエリアに点在するスポットをつなぐ新たな交通手段である「舟運」についても触れた。野村不動産は2024年5月から、通勤向けの舟運サービス「BLUE FERRY(ブルーフェリー)」の運行を開始している。野村不動産が運営する日の出ふ頭の船着場「Hi-NODE(ハイノード)」と晴海ふ頭を結ぶ通勤線だ。
松尾氏によると、「通勤船とは別に芝浦プロジェクトの専用船を用意する」という。専用船については「すでに建造を開始し、2025年度に就航予定だ。専用線はフェアモント東京のサービスの一環として利用する予定で、S棟の足元の芝浦運河に新設する桟橋から乗船できる。浅草や豊洲市場といった観光地、大手町や日本橋などの都市部、羽田空港にもアクセスを可能にする」と紹介した。
さらに松尾氏は、「水辺の可能性を十分に生かしつつ、BCP対策も講じている」と語り、建物の水害対策について説明した。1階に海抜4メートルの位置まで防潮板を設置して建物内への浸水を防ぐ他、建物内に浸水した場合の対策として、防災センターを海抜8メートルの2階に、電気設備は海抜23メートル以上の4階以上に設置する。
加えて、2024年4月、建物の高い省エネ性能の実現により、オフィス部分において「ZEB Oriented」を取得した。また、街区全体でのCO2排出実質ゼロを目指しており、野村不動産の発電施設による再生可能エネルギーの導入や、その他の再エネ由来電力の調達準備を進めているという。
S棟の開業に合わせ、浜松町駅からのアプローチも改善する。「駅から計画地への現在の動線は、古く閉塞感があり、バリアフリー化されていない。以前から地域の課題にもなっていた」(松尾氏)として、バリアフリー化やエスカレーターの設置など、機能的なアップデートを実施する。
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