パナソニック 空質空調社の次の事業戦略 ガス/電気一体型空調やクラウド運用、生産拠点の国内回帰へBAS(2/3 ページ)

» 2023年10月16日 08時11分 公開
[川本鉄馬BUILT]

電気とガス双方の空調機を開発/製造する唯一のメーカー

 池田氏は、空質空調社の優位性として、動力源で電気またはガスを使うエアコンの両方を開発/製造できる点をあげる。エアコンの動力源に関する電気とガスの知見があると、導入する場所や目的に応じて、より好ましい方式が選べる。電気とガスの連携も可能だ。

 業務用の空調市場では、2050年のカーボンニュートラル実現に向けてエネルギーの使用量に厳しい目が向けられている。また、コロナ禍を経験したことにより、除菌や消臭、換気への関心も高い。これらに対し、いかに顧客満足度の高い製品やサービスを提供できるかが、今後のビジネスを大きく左右することになる。

 成長戦略に掲げられた機器の連携によるシステムの強化は、さらなる省エネを実現する施策となる。この点に関し、パナソニックはエネルギー関連以外にも多彩な技術を有する。同時に、複数の機器を組み合わせ、エネルギー効率を最適化する技術も蓄積してきた。こうした歴史は、他社にはない大きな強みといえる。

 パナソニックには、ナノイーX、ジアイーノといった除菌・消臭の技術があり、空調機器に連携、または搭載することで製品が強化される。重視している「IAQ(室内空気質)」の取り組みも、空質空調社が今後の成長戦略の柱に挙げている。

 池田氏は、「こういったシステム商材を進化させていけば、空質空調社の空調設備にプラスアルファとなる付加価値として提供ができる」と語った。池田氏は、電気ヒートポンプエアコン(EHP)のオフィス・店舗用エアコン(PAC)とビル用マルチエアコン(VRF)の2022年の出荷では、7割近くがナノイーXを搭載したものだということも明かした。2023年においても、ビル用マルチの室内機(主力機種)でも導入を進めている。

電気とガス双方の技術を持つのがパナソニックの強み。これに加え、換気、除菌、消臭などの機能性とも連携できる 電気とガス双方の技術を持つのがパナソニックの強み。これに加え、換気、除菌、消臭などの機能性とも連携できる 提供:パナソニック 空質空調社

環境性能と省エネ、空気質改善を実現する製品群を展開

 電気とガスを組み合わせた製品では、2023年4月に販売を開始した「一体型ハイブリッド空調 スマートマルチ」がある。ガスと電気を上手に組み合わせ、業界トップクラスの省エネ性に加え、BCP対応をも実現している。

 パナソニックではこの他にも空調、換気、除菌などの機能を一体化した業務用の空質空調連携システムを2022年4月に発売するなど、機能や機器を連携させる技術を積み重ねてきた。そして、2022年7月には専門組織を発足させ、廃熱を活用して高効率な運転を可能にする分散型エネルギー事業に参入した。同年12月にはヤンマーと協業を開始。天然ガスやバイオガスといった環境負荷の低い燃料でクリーンに発電し、その際に発生する熱も給湯や冷暖房に利用する「マイクロコージェネレーションシステム」の分野でも事業を拡大している。

ガスと電気を最適に組み合わせて省エネを実現する「一体型ハイブリッド空調 スマートマルチ」 ガスと電気を最適に組み合わせて省エネを実現する「一体型ハイブリッド空調 スマートマルチ」 提供:パナソニック 空質空調社

 他にも、説明会ではナノイーXを業務用空調の室内機に標準装備することを検討していることも紹介。パッケージエアコンの主力商品は、2022年に全機種で展開しており、2023年にはビル用マルチ機種にも進出する。

ナノイーXやジアイーノと熱交換器ユニットに電気空調を組み合わせた空質空調連携システム。連携によって、従来比で最大52%の電力使用が削減可能に ナノイーXやジアイーノと熱交換器ユニットに電気空調を組み合わせた空質空調連携システム。連携によって、従来比で最大52%の電力使用が削減可能に 提供:パナソニック 空質空調社

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