少子高齢化や働き方改革など、建設業界には解決しなければならない問題が山積している。2024年には残業規制も適用されるなど懸念点は多く、解決までの時間は限られている。そうした中で関係各社が最も頭を悩ませているのが、人材確保に関する悩みだ。技術者の減少が深刻化する中で、建設業界向けの転職支援を手掛けるヒューマンリソシアが、業界の未来予測や企業が取るべき採用アプローチをレクチャーする。
建設技術者の転職支援を手掛けるヒューマンリソシアは2023年6月、人手不足や働き方改革などさまざまな課題を抱える建設業界向けに「解説!2030年の建設人材予測とDXツールによる生産性向上施策」と題したWebセミナーを開催した。
建設業は、時間外労働の上限規制が2024年4月に適用されるため、多くの企業は人材確保や業務効率化になどの対応に追われている。そうした中で本セミナーでは、今後の建設技術者の人材動向といった未来予測を基に、企業が早急に取るべき対応策を紹介した。
第一部では、人材紹介事業部 事業部長 高橋良久氏(※高ははしご高)が登壇し、建設技術者の2030年未来予測をテーマに解説した。
高橋氏はまず、建設業界を取り巻く大きな課題として人材不足、生産性が上がらないこと、社員の高齢化、働き方改革が進まないことの4点を挙げ、「2024年4月からの時間外労働規制の適用に向けて、こうした課題の解決は差し迫っている状況にある」と分析する。
全産業ベースで最近の人材動向を見ると、2015年度から有効求人数が求職者数を上回っている。新型コロナ感染症のまん延で、一時的な減少はあったものの、直近の2022年度の求人倍率は1.23倍と採用需要は依然として高い。
建設技術者に限ってみると、他産業よりもはるかに顕著な売り手市場にある。2012年度から有効求人倍率は上昇傾向にあり、直近の2022年度でも6.53倍と高止まりし、慢性的な人手不足が続いている。
2020年の国勢調査によれば、建設技術者の数は50万6450人。年齢層の構成比を見ると55歳以上の分布が年々増加していて20年は38.2%と高齢化の傾向が著しい。
一方、今後の懸念材料として、「25歳から54歳の若手からミドル層の減少が予測される。2000年には55.1%を占めていた割合が、2020年には43.3%に下がっている」と高橋氏は指摘する。
こうした背景には、55歳以上の層は定年を迎えても、建設技術者として事業を継続したり、就業につくパターンが増えたりしていることが分かる。一方でミドル層を占める35〜44歳は大きく減少しており、他職種や他業界に流出していると予想する。
人材動向のデータを基にした2030年の未来予測では、社会環境や労働者意識の変化などを勘案して2020年度と比較すると建設技術者の数は、約4.2%増の52万7954人になると独自試算した内容を発表した。一方で、建設技術者の需給ギャップは複数の経済成長シナリオで試算し、最低で2万1314人、ベースラインにのっとった試算で4万5491人、最大で7万6273人が不足すると明らかにした。
高橋氏は、「ミドル層が少なくなる傾向が続けば、近い将来にマネジメント層が不足する懸念がある。将来を見据えれば、シニア人材が活躍できる環境づくりを進めるとともに、若年者やミドル層の人材確保策が重要になる」と強調した。
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