三井住友建設は、既設橋梁(きょうりょう)の鉄筋コンクリート(RC)床版の維持管理で、ロボットとAI、自動設計ソフトを用いて、一連の業務を省力化する「床版維持管理システム」を開発した。
三井住友建設は、既設橋梁(きょうりょう)の鉄筋コンクリート(RC)床版の維持管理で、変状の調査や診断から、補修、補強設計に至る一連の業務を省力化する「床版維持管理システム」を開発したと2023年5月26日に公表した。
床版維持管理システムは、自走式点検ロボットによる調査やAIによるひび割れ診断、自動設計ソフトによる最適補修・補強設計を組み合わせている。高速道路床版補強工事で試験運用を行い、一連の維持管理業務の作業時間が半分に短縮し、生産性が大幅に向上することを確認したという。
高速道路橋のRC床版は、車両の大型化や走行台数の飛躍的な増加によるひび割れ、漏水、抜け落ちなどの変状が多く報告されている。しかし、その維持管理には、狭隘(きょうあい)な足場上での近接目視調査に始まり、損傷図作成や損傷度判定、補強設計などを人手で行っている。人の手によるため、工事着手までに時間と費用を要し、生産性向上が課題となっている。
そこで三井住友建設では、維持管理に関する一連の業務を省力化するべく、床版維持管理システムを開発することとなった。
システムの特徴としては、近接目視やRC床版の部材寸法計測など、人による調査の代わりに、軽量でコンパクトな自走式点検ロボットが自動撮影して調査を行うため、苦渋作業もなく安全性も確保される。ひび割れ診断では、自走式点検ロボットが取得した調査結果をもとに、AIが損傷度合いを評価するため、損傷の見落としや誤認が低減される。
AIによる評価や診断後は、自動設計ソフトでシート補強材の最適配置、CAD図面作成、数量計算を行うため、設計業務の効率化が図れるとともに工事費用の経済性向上につながる。
システム導入による効果としては、従来手法では、調査・診断から補修・補強設計に至る一連の業務に1径間あたり約40時間を要していたが、システムを用いることで20時間で完了し、より効率的で迅速に損傷評価と補修・補強設計が行える。
今後は、本システムをMR(Mixed Reality:複合現実)技術と組み合わせ、建設現場での利用に適したデジタルツインを構築することで、さらなる生産性向上と信頼性向上を進めていくとしている。
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