2050年までに温室効果ガス排出をゼロにする政府の宣言は、生活のあらゆる場面に大きな影響を与えている。建設関連では、CO2排出量に占める比率が高いオフィスビルや住宅で、消費エネルギーをいかに減らすかが大きなテーマとなっている。
国土交通省 大臣官房審議官(住宅局担当) 石坂聡氏は、建築総合展「第7回 ジャパンビルド−建築の先端技術展−」(会期:2022年12月5〜7日、東京ビッグサイト)で、「カーボンニュートラルの実現に向けた住宅政策の取組」と題する講演を行った。
温室効果ガスの排出削減が叫ばれる中、国の住宅政策でも多くの取り組みが発表されている。石坂氏の講演では、改正建築物省エネ法に関して、住宅のエネルギー消費やZEH、リフォーム施策などの最新動向を説明した。
石坂氏は冒頭、「日本におけるエネルギー消費量が、業務部門と家庭部門の合計で約3割あり、ここをいかに減らすかが課題だ」と語った。日本では、暖房でのエネルギー使用量が欧州に比べて少ない。その理由を石坂氏は、生活様式の違いにあるとした。
日本には“コタツ文化”があり、欧州のように建物全体を暖めることはしない。現在でも、人がいる部屋だけ暖房する“局所暖房”が一般的で、冬の暖房に費やすエネルギーは、ドイツに比べると約5分の1。日本は暖房以上に、給湯でエネルギーを使用する。これは、風呂の文化があるためだ。
空調に関しては日本では、夏より冬にエネルギーの消費が多い。外気が5度の冬に室内を20度にすると、温度に15度の温度差が生じるが、外気が32度の夏に冷房で室内を28度にしても4度の差しか生じない。この違いは、そのまま使用するエネルギー量に反映される。
エネルギーの利用状況は国や状況によって異なり、石坂氏は、「施策を講じるには、何を中心にやるかが大事」と語る。風呂1つとっても、介護問題やヒートショック対策まで、さまざまな影響を考慮する必要がある。
住宅の省エネに関する注目点は、建築物省エネ法が改正され、2025年に戸建て住宅も含む新築住宅・非住宅の建築物に対し、省エネ基準適合の義務化がスタートすることだ。建築物省エネ法ができた当時の2015年は、床面積2000平方メートル以上の大規模な非住宅のみを対象としていたが、戸建て含む住宅にまで拡大されるため、社会全体として大幅な省エネ化が図られることになる。
基準に対する適合率では、新築住宅では年々上昇傾向にあり、令和元(2019)年のデータでは、小規模な住宅の適合率は87%。石坂氏は「(現時点では)ほぼ9割以上が適合している」としながらも、「適合率をさらに上げていくことが重要」と話す。
基準適合に関しては、大規模な建築では2030年よりも前の実現、住宅についても遅くとも2030年までに、いわゆるZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)相当にまで断熱基準を上げることを目標にしている。
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