JFEスチールは、鉄鋼製品の厚板内部の超音波探傷検査で、人手の作業を自動化する「自走式精密検査ロボット」を実用化し、このほど「第57回機械振興賞」の機械振興協会会長賞を受賞した。
JFEスチールが開発した「自走式精密検査ロボット」が、機械振興協会が主催する「第57回機械振興賞」の機械振興協会会長賞を受賞したと2023年2月22日に発表した。
機械振興賞は、機械工業における技術開発の一層の促進を図るため、優秀な研究開発やその実用化によって、機械産業技術の進歩や発展に著しく寄与したと認められる企業/大学/研究機関、研究開発担当者に対して毎年与えられる表彰制度。JFEスチールの機械振興賞の受賞は5年連続12回目となる。
JFEスチールでは、鉄鋼製品の厚板内部の超音波探傷検査は、オンラインの自動探傷を適用してきたが、板厚などの制約から、熟練者によるオフラインの手動探傷も一部で用いていた。しかし、人手では、鋼板上で検査機器を動かす精度、検査結果を記録する正確性、作業能率などに限界があるため、検査信頼性と作業効率のさらなる向上が課題となっていた。
その人手で作業する工程の解決策としてJFEスチールは2021年3月、自走式ロボットと超音波探傷器を組み合わせた「自走式精密検査ロボット」を開発した。ロボットには、屋内型の高精度自己位置認識システムが採用されており、厚板上でロボットが移動するべき目標位置と自己位置の差分を認識することで、目標ルート上を自動で移動しながら超音波探傷できる。
自走式精密検査ロボット探傷動作から合否判定に至るプロセスが自動化され、検査信頼性もオンライン自動探傷検査と同等まで上がる。また、検査結果はデジタルデータで自動保存されるため、製品証跡などトレーサビリティーの向上、品質トレンド管理の簡易化にも寄与する。さらに、ロボット本体を1人で持ち上げ運搬可能なレベルまで小型・軽量化するなど、ユーザビリティも大幅にアップした。汎用性では検査センサーを交換すれば、厚板に限らず別の検査にも対応する。
ロボットは既に京浜地区の東日本製鉄所の厚板工場に3台を導入し、運用を開始している。今後は、倉敷地区・福山地区の西日本製鉄所にも展開し、作業の効率化を図りながら、厚板品質のさらなる向上に努めていく。
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