粉じん飛散量を95%以上低減する新技術、戸田建設導入事例

戸田建設は、産学連携で環境負荷が小さい高性能の粉じん抑制技術を開発し、同技術の実証試験を同社の施工現場で行い、有効性を確認した。今後は、新技術の現場試験適用を重ねて、実用化と製品化を目指す。

» 2022年12月26日 09時00分 公開
[BUILT]

 戸田建設は、産学連携で環境負荷が小さい高性能の粉じん抑制技術を開発し、同技術の実証試験を同社の施工現場で行い、有効性を確認したことを2022年12月20日に発表した。

降雨量毎時80ミリでも土砂流出量を5分の1以下に削減

 宅地造成などの作業現場では、強風や工事車両の走行によって粉じんが発生することがある。生じた粉じんは、吸い込むことによる健康被害や周辺地域への飛散が第三者とのトラブルを起こすケースがあった。

 解決策として、水の散布や鉄板の敷設などで粉じんの舞い上がりを防止する他、防塵(ぼうじん)ネットを設置して粉じんの周囲への飛散を防ぐといった対策が取られていた。しかし、こういった粉じん対策は一時的な効果が得られるが、根本的な解決には至らないという課題があった。

 そこで、戸田建設は、高分子化合物を利用した粉じん抑制技術を開発し、有効性を検証してきた。

 新たな粉じん抑制技術は、極性が異なる正電荷と負電荷の高分子化合物を合わせた複合体(polyion complex、PIC)を利用したもの。PICを適切な濃度に希釈して地面に散布することで、高分子化合物の分子鎖が地中の土粒子と絡まりあって固定化し、風などにより粉じんが発生することを抑える。

タンク内での攪拌状況(左)と現場への散布状況(右) 出典:戸田建設プレスリリース
未対策と新技術適用時の粉じん濃度の比較 出典:戸田建設プレスリリース

 具体的には、未対策と比較して、粉じん飛散量を95%以上低減(風速毎秒15メートルの場合)し、土砂流出量を5分の1以下に削減(降雨量毎時80ミリの場合)して、国際的に認められた化学物質の基礎試験「OECDテストガイドライン」の魚類急性毒性試験における基準をクリアしている。

 また、戸田建設は、同社の造成工事現場に上記の技術を試験適用した結果、散布から90日が経過した時点でも、粉じんの抑制効果が持続していることを確認した。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.