AIを活用したクリーン空調最適制御システムを開発、清水建設AI

清水建設は、クリーンルームの空調負荷低減を目的に、AIを用いて、室内で循環する清浄空気の風量を最適化するAI空調制御システムを開発した。AI空調制御システムは、FFU運転制御のAI化により、室内の清浄化に必要な搬送動力を従前システムと比べて30%減らせる見込みだ。

» 2022年12月26日 13時00分 公開
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 清水建設は、クリーンルームの空調負荷低減を目的に、AIを用いて、室内で循環する清浄空気の風量を最適化するクリーン空調制御システムを開発したことを2022年12月21日に発表した。

学習開始から収束まで半年程度を要する学習期間を2カ月程度に短縮

 今回のシステムは、2019年に清水建設が開発した省エネ型クリーン空調制御システム「クリーンEYE(アイ)」の制御機構をAI化したもので、搭載されたセンサーが感知した室内環境の変化に応じて、AIがファンフィルターユニット(FFU)の運転出力を細かく制御し、必要最小限のエネルギーで要求水準を満たす清浄環境を維持する。

 開発技術のベースとなるクリーンEYEは、電子デバイス製造装置の組立工場などで求められるISOクリーンクラス6〜8の清浄環境に適応したクリーン空調制御システム。制御機構は、クリーンルーム内に滞在する作業者を検知する画像型人感センサー、室内の粒子濃度を検知するパーティクルセンサー、センサーの検知データを基にFFUの出力調整を行う制御装置で構成され、センサーが検知した在室者・粒子濃度データを基に、FFUの運転台数・運転出力を自動制御可能。

 クリーンEYEの省エネルギー性能は、施設稼働時に想定される発塵量の最大値に合わせて、循環風量を設定する一般的な空調システムとの比較で約50%に達する。一方、要求水準を満たす室内清浄度を確実に担保するために、安全性に配慮して自動制御のロジックや制御パラメータを設定しており、省エネルギー化できる余地も残されていた。

 そこで、清水建設は、クリーンEYEを基にAI空調制御システムを開発した。AI空調制御システムは、クリーンEYEの空調制御機構に深層強化学習機能を付加することで、エリア単位で最適な空調制御を実現している。具体的には、AIが、さまざまな場面で室内環境データからエリア単位(ほぼ1スパン単位)で清浄度の過不足を推定し、FFUの運転出力を状況に即して細かく調整することで、空調負荷を抑えられる。

AI空調制御システムのイメージ 出典:清水建設プレスリリース

 AIの深層強化学習では、CFD(数値流体力学)解析技術を活用して、実運用が始まる前に訓練用データを作成し、仮想空間上で事前学習を重ねられる学習環境を構築する。これにより、通常は、学習開始から収束まで半年程度を要する学習期間を2カ月程度に短縮し、AIによる空調制御機構の早期実装を可能にしている。

 今後は、新たなAI空調制御システムをクリーンルーム施設の新設と改修計画に広く展開し、カーボンニュートラル社会の実現に貢献していく。

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