大林組は、大阪大学大学院医学系研究科 保健学科未来医療学寄附講座 澤芳樹教授と共同で、無影灯を必要としない天井照明型手術室「オペルミ」を開発した。
大林組は、大阪大学大学院医学系研究科 保健学科未来医療学寄附講座 澤芳樹教授と共同で、ジャパンバイオデザイン大阪が提供するニーズ発医療機器開発プログラム「MIU(Medical Innovation Unit)※1」に参加し、無影灯を必要としない天井照明型手術室「オペルミ」を開発したことを2022年11月25日に発表した。
※1 MIU:開発の初期段階から事業化の視点も検証しながら、医療現場のニーズを出発点として問題の解決策を開発し、イノベーションを実現するアプローチを特徴とするプログラム。
従来の手術室には、術野などを明るく照らすために、影が生じない無影灯が設置されている。しかし、無影灯には、「天井が他の病棟フロアに比べて高くなる(病棟フロア天井高2600ミリに対し手術室は3000ミリ)」「無影灯が熱い(術者環境の悪化)」「無影灯がクリーンエアー(空調)の気流を妨げる(患者環境の悪化)」といったデメリットがある。
そこで、大林組は、澤芳教授とともに、天井全面に無影灯と同様の機能を持たせることで、無影灯を必要としない天井照明型手術室のオペルミを開発した。
オペルミは、術野を明るく照らすために、72基の「自動シューティングライト」と手術室全体に均一な明かりをもたらす「導光板パネル照明」を搭載しており、手術に最適な無影環境を実現する。
高出力・高演色性の自動シューティングライトは、1基ごとに照射角度を変えられ、ライトが自動で角度を変更し、手術台のどのエリアにでも焦点を合わせられる他、多方向から術野に照射することで、術中の手や器具の影を分散および希薄させ、死角を減らし高い照度を確保して、同時に複数の箇所を照らせる。
加えて、両社は、タブレット端末からの操作指示や72基のシューティングライトが連携した照射位置への自動フォーカス、執刀医の動きに合わせた自動追尾機能の導入も検討している。
一方、面発光の特殊パネルである導光板パネル照明をオペルミの天井部全体に取り付けることで、上部から均一な光を手術室内に落とし、無影環境を再現している。なお、点灯エリア、明るさ(調光機能)、調色を詳細に調整することによってさまざまな術式に対応した環境を達成する。
加えて、オペルミを手術室に導入する際には、手術台の直上部を空調吹き出し口とし、その周囲に自動シューティングライトを配置することで、照度を確保しつつ術野環境をクリーンに保てる。
また、無影灯が不要なことから、手術室の天井高を他の病棟フロアと同様の2.6メートルに抑えられるため、病棟の各フロアへの手術室配置や既存の病棟への手術室の増設など、柔軟な対応が行える。天井高を低く設定することで躯体の減少や柱のスリム化を実現し、建設コストも減らせる。
既に、両社はオペルミの性能を確かめる目的で検証を行っている。オペルミの検証に参加した医師からは、「救急処置室(初療室)に導入したい」「病棟と同じフロアに配置できれば、別の階の手術室まで患者を移動しなくても済む」「従来の無影灯がないことで、術後のポータブル撮影時に機材の設置がスムーズに行える。ロボット手術システムやアンギオ(血管造影)撮影室が合体したハイブリッド手術室の機器との干渉がなくなる」といったコメントが寄せられた。
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