東急建設は、コンクリートの流動性を保持する「流動保持剤」によって、コンクリートのワーカビリティーをコントロールする工法を実用化し、神奈川県内の建築工事で初適用した。今後は、不具合や残コンの発生が懸念される全ての工事に新工法を適用することで、高品質・高耐久な構造体の構築に取り組む。また、流動性の低下に伴う残コン・戻りコンの発生を抑制し、廃棄物ゼロの実現を目指す。
東急建設は、コンクリートの流動性を保持する「流動保持剤」によって、コンクリートのワーカビリティー※1をコントロールする工法を実用化し、神奈川県内の建築工事で初適用したことを2022年10月31日に発表した。
※1 ワーカビリティー:フレッシュコンクリート(硬化前のコンクリート)の性質を表す言葉。材料分離を生じることなく、運搬、打込み、締固め、仕上げなどのコンクリート作業を容易にできる程度を表す。
コンクリートの流動性は、時間の経過とともに低下し、充填不良やコールドジョイントといった初期不具合あるいは配管の閉塞や作業遅延(締固め時間の増加など)の原因となるため、施工時にいかに高い流動性を保持するかが品質確保で重要となる。一方、著しく流動性を失ったコンクリートは、構造体へ打ち込まず、返却および廃棄することもあるため、残コンや戻りコンの増加につながる。
そこで、東急建設は、通常のコンクリートに建設現場で「流動保持剤(JIS適合品)」を添加することで、圧縮強度や凝結などに大きな影響を与えず、流動性のみを保持させられる工法を実用化した。
なお、これまでも単種類の流動保持剤を添加する工法は実用化されていたが、上記の工法では、多様な条件下でも十分な効果を発揮するという点に注力して開発を行った。
実用化したのは、「Type1」「Type2」といった2種類の流動保持剤を使い分けることで、異なる施工条件で最適な流動性を実現し、コンクリート施工におけるワーカビリティーをコントロールする工法。
2種の保持剤は、いずれも建設現場で添加することが可能で、添加後90〜150分程度の間コンクリートの流動性を大きく低下させない性能を持つため、構造体における品質低下の抑制と残コン・戻りコンの削減に貢献する。
さらに、添加直後における流動性の変化が異なるため、生コン工場からの運搬距離や現場内での圧送距離の違いに柔軟に応じられる。
ちなみに、コンクリートの流動性は、外気温が高いほど低下する傾向にあるが、新工法で採用した流動保持剤は、いずれもコンクリート温度が35度を超える環境下でも、製造から180分後までは、施工に必要な流動性を確保するため、酷暑期でも高品質な構造体の構築が可能。
新工法を適用した建築工事では、外気温が高い時期に長距離圧送を行う計画を採用し、配管内でコンクリートの閉塞が生じる可能性があったため、抑制対策として流動保持剤のType1を使った。その結果、コンクリートの流動性が長時間に渡って良好なことを確かめ、懸念された閉塞を起こすことなく所定の工事を無事に完了した。
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