大東建託の賃貸住宅事業は、2021年度の新築賃貸住宅着工シェアで業界トップの12.5%。入居者は214万人で、政令指定都市の人口にも相当する。賃貸住宅を公共性の高い「社会インフラ」と捉え、環境・防災・ライフスタイルの3つのコンセプトを軸に、時代の社会ニーズに合わせた新商品開発に取り組んできた大東建託が新たに提案する、災害配慮型賃貸住宅「ぼ・く・ラボ賃貸 Yell(エール)」。開発のキーワードは、備蓄とコミュニティーだ。
大東建託は2022年9月29日、オンライン記者発表会で、新商品「ぼ・く・ラボ賃貸 Yell(エール)」(以下、Yell)を発表した。
同社の新商品開発における基本方針は、環境・防災・ライフスタイルを切り口とした住まいと暮らしにおける新しい価値を創成すること。これまで、地球温暖化、激甚化する災害、感染症のまん延など、劇的に変化する社会に対応する新しいスタンダードを模索してきた。
2017年には、暮らしと防災の在り方を考える研究室「ぼ・く・ラボ」を設立。その後は、平時の暮らしが非常時の備えにもなる「フェーズフリー」な賃貸住宅の開発に取り組んできた。新商品のYellは、その一環として2022年3月11日に販売を開始した「ぼ・く・ラボ賃貸 niimo(ニーモ)」に続く、災害配慮型賃貸住宅の第2弾である。
Yellのコンセプトは、「もしもに備える、蓄える、人や街と支えあえる安心の住まい」。木造2×4工法、南側玄関タイプの2階建て長屋住宅。4〜10戸に対応可能で、省エネ性能はZEH Orientedを標準としている。1階住戸はサンルームを備えた1LDK(専有面積51.7平方メートル)、2階住戸は広いバルコニーをもつ2LDK(同59.1平方メートル)。1、2階とも、壁付きキッチンを採用した豊かなダイニングスペースを確保したプランとなっている。
防災面では、2つの課題解決を目指して商品開発を進めたという。
1つ目の課題は「備蓄」。九州地方を中心に大きな被害を出した2020年の「令和2年7月豪雨」では、コロナ禍での指定避難所の不足が浮き彫りになり、分散避難の必要性が認識されるきっかけになったことは記憶に新しい。特に都市部では、地震や水害など、今後想定される大規模災害時の避難所不足が懸念されており、避難の可能性を広げるための、在宅避難に着目が集まっている。
在宅避難の実施で課題となるのが備蓄だ。1995年1月17日に発生した阪神淡路大震災では、電気で約1週間、ガスと水道に関しては数カ月から半年近く、復旧に時間がかかっている。政府も大規模災害時のライフライン停止を想定し、各家庭に1週間分の備蓄を推奨している。
ただし、毎年のように自然災害が発生しているものの、各家庭での備蓄は進んでいない。安全靴やヘルメットといった産業用安全衛生保護具などを製造販売するミドリ安全が行った「2021年度 家庭の防災対策実態調査」によると、備蓄が進まない理由として増加傾向にあるのが、備蓄品の「保管スペース不足」。備蓄の必要性は理解しているが、そのための物理的なスペースが足りないというわけだ。
大東建託はこの点に注目。Yellで、同社の一般的な間取りと比べ約2倍の収納スペースを持つプランを実現した。
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