現行の機種は、建設向けスタンダードタイプ「Skydio 2+」と、高温や低温など特殊環境下での運用に適した「Skydio X2シリーズ」の2モデルを展開。Skydio 2+は、4K動画/1200万画素の画像が撮影可能なカメラを積み、撮影用カメラは上向きで90度まで動き、上部を撮影する際には機体を方向転換する必要がない。サイズは273(幅)×74(高さ)×223(奥行き)ミリとコンパクトのため、狭所にも入り込める。
Skydio X2シリーズは高耐久モデルのX2Eと、より強固なセキュリティ対策を施したX2Dの2機種で、両機種とも可視光カメラに加えて、ミッションに応じてサーマル(赤外線)カメラまたはカラーカメラを選択できる。もちろんながら、Skydio 2+も含めた全機種で通常のGPS以外に、AIによる自律飛行に対応している。
Skydio機の自律飛行を可能にしているのは、撮影用とは別のドローンに搭載した上下6台の魚眼カメラ。360度全方位をカバーしたカメラ映像をAIのディープラーニングで解析することで、ドローンの位置や機体の姿勢、周辺の障害物を3次元で把握する「Visual SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)」を実現している。
Visual SLAMは、自己位置推定と環境地図作成を同時に行うSLAM技術の1つで、レーザーセンサーのLidarをベースにした方式に比べ、映像を一次情報としているので障害物や周囲環境の識別に優れている。無人搬送車(AGV)や自動車の自動運転、自律走行するロボットにも採用されており、GPSに依存しないため、ドローンであれば屋内や山林といった非GPS環境下でも障害物を自動で避けながらの飛行が可能になる。また、障害物の検知範囲は、デフォルトの半径約87センチ、約28センチ、約11センチ、OFFのそれぞれを現場状況に応じて選べる。
Visual SLAMの利点を生かした建設分野での主な用途は、障害物となる配管が空中を露出して横断しているプラントやGPSが取得しづらい橋梁(きょうりょう)下部や橋脚の点検、屋内の建築現場での巡回などが想定される。
国内では建設業務でのドローン活用といえば、インフラ点検や起工測量が真っ先に思い当たるが、米国では日々状況が移り変わる建設現場をドローンで定期的に空撮して、施工の進捗管理とするケースが一般的になりつつある。今後、2027年度には7933億円にまで成長すると予測されている国内のドローン市場でも、AIによる自律飛行で、建設現場の管理目的でのドローン利用が広がっていくことが見込まれている(出典:インプレス総合研究所「ドローンビジネス調査報告書2022」)。
柿島氏は、「これまでマニュアル操作のドローンは、パイロットの育成期間や育成コストが建設業での参入障壁となっていた。しかし、自律飛行するドローンであれば、経験の浅い社員でもすぐにドローン業務にあたれる。言い換えれば、ユーザーがドローンに適応する必要はなくなり、ドローンそのものが点検業務や現場監視など多様なタスクに対応するようになる。ドローン市場も、いままでの機体や機器のハードウェアの進化から、ソフトウェアの発展へと新たなフェーズに入ており、そのニーズに応えられるドローンといえるだろう」と強調する。
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