本連載では、日立ソリューションズの建設ICTエバンジェリストが、建設業界でのセンサー技術の可能性について、各回で技術テーマを設定して、建設テック(ConTech)実現までの道のりを分かりやすく解説していきます。最終回の第4回は、画像データを活用した画像認識技術とセンサー技術について、建設業界での活用例も交えて紹介します。
連載第3回では、衛星測位技術が利用できない「屋内」での測位技術について紹介しました。そのなかで、「SLAM(Simultaneous Localization And Mapping)」というカメラ映像を用いた自己位置推定技術についても解説しましたが、SLAMは“画像”を用いて“位置”を推定する技術です。“画像”は位置推定だけでなく、さまざまな用途に利用することができます。今回は、この“画像”を活用した技術と建設分野での活用例を紹介します。
1つ目の技術は「画像認識」です。一番身近な例としては、顔認識技術があります。顔認識は、写真のなかで顔が映っている部分を自動的に抽出する技術です。最近のデジカメやスマートフォンには当たり前のように搭載されていますので、皆さんも利用しているかもしれません。撮影時にリアルタイムで顔を認識することで、顔がより鮮明に映るように補正できますし、撮影後の画像に対して「誰」が映っているのかを自動的に認識させて、写真の分類もできます。
このような画像認識技術は、建設業では「工事写真の自動分類」という場面で活用できます。現代の工事では、建設前の状況、工事中の状況、そして施工後の品質確認でのエビデンスなど、あらゆる場面で現場の写真を撮影する機会があり、膨大な写真を管理する必要があります。しかし、その整理には膨大な時間が掛かっているのです。大量の写真が撮影時間や撮影位置(GNSSの情報をもとに自動的に撮影位置を画像のヘッダに挿入)が取得可能なだけでなく、「何を撮影したのか」で分類できようになれば、整理作業の効率化につながります。
最近の画像認識技術はさらに進化しています。そのきっかけとなったのが2012年の画像認識コンテスト「ILSVRC(ImageNet Large Scale Visual Recognition Challenge)」で、カナダ・トロント大学のジェフリー・ヒントン教授らのグループが画像認識に初めて適用したディープラーニング(深層学習)です。コンテストでは、「ディープラーニング(深層学習)」を用いることにより、他のチームに圧倒的な差をつけて優勝し、その有用性が世界中で評判になりました。
ディープラーニングとは機械学習の1つです。画像認識における機械学習は、膨大な画像データから画像を認識するための規則性を探していくプロセスといえます。その規則性のことを“特徴量”と呼びますが、ディープラーニングはその特徴量を、より簡単(自動的に)に見つけることができる点が画期的なのです。
ディープラーニングを用いることで、より複雑な画像認識が可能になります。では、建設業界での活用例を見てみましょう。
まずは、画像を用いた「安全衛生管理システム」です。工事現場に設置したカメラに映った画像から人物を抽出するだけでなく、その人物が安全器具を正しく装着しているのかも判定できます。例えば、ヘルメットをしているのか、安全帯を装着しているのかなどを自動的に判断し、警告を通知するといった現場での安全管理に役立ちます。
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