西松建設と宮城大学がペーパースラッジを混合した流動化処理工法を開発施工

西松建設は、宮城大学 食産業学群 教授 北辻政文氏との共同研究で、産業廃棄物であるペーパースラッジを主原料とした混和材を用いた流動化処理工法を開発した。新工法は、施工現場で品質の安定した流動化処理土を製造・打設することを可能とする。今後、西松建設は、流動化処理土を使用する実際の施工現場への利用拡大を進めるとともに、ペーパースラッジ混和材を他の工種へ活用し、資源の有効活用を進めていく。

» 2021年08月05日 13時00分 公開
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 西松建設は、宮城大学 食産業学群 教授 北辻政文氏との共同研究で、産業廃棄物であるペーパースラッジを主原料とした混和材を用いた流動化処理工法を開発したことを2021年7月8日に発表した。

ペーパースラッジに含まれるリグニン成分により軽量化を実現

 紙を製造する工程では、紙になり切れない微細な繊維や填料(てんりょう)などの無機物を含む有機汚泥が発生するが、これはペーパースラッジと呼称されている。ペーパースラッジは、製紙産業が排出する産業廃棄物のうち約7割を占めているため、ペーパースラッジの有効利用は、廃棄物の発生抑制と環境の負荷低減に向けた観点から重要なテーマとなっており、活用が望まれていた。

 そこで、西松建設は、宮城大学と協力し、建設工事で締固めが難しい狭い場所や空間などに流し込み施工で隙間を充填する流動化処理工法にペーパースラッジを採用する手法を開発した。

ペーパースラッジ混和材 出典:西松建設

 ペーパースラッジ混和材を混合した流動化処理土の特徴は、ペーパースラッジに含まれるリグニン成分により流動化処理土内に微細空気が取り込まれることで軽量化し、流動性を高める点。さらに、ペーパースラッジに含まれる微細繊維により材料分離が小さく、安定した品質の流動化処理土を製造することができる。また、ペーパースラッジ混和材を混合した流動化処理土の改良体は一軸圧縮試験のピーク強度後も緩やかな強度低下傾向を示すことから靭性を改善することが判明している。

 西松建設と宮城大学では、細粒分の少ない砂質土を原料土とした流動化処理土の品質向上を目的とし、ペーパースラッジ混和材を配合した流動化処理土の室内配合試験および屋外実証試験を行った。

流動化処理土の実証試験 出典:西松建設

 実験では、ペーパースラッジ混和材を流動化処理土に混合することで、流動化処理土内に微細な空気が連行され流動性がアップ(軽量化)するとともに、材料分離抵抗性も高まることを確認した。屋外実証試験の結果では、細粒分の少ない砂質土を原料土とした流動化処理土に対して、ペーパースラッジ混和材を添加することで材料分離抵抗性が向上し、品質の安定した流動化処理土を製造可能なことが分かった。

ラボ試験の結果(左)と実証試験の結果(右) 出典:西松建設
流動化処理土のラボ試験の結果、一軸圧縮試験の応力−ひずみ曲線 出典:西松建設

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