三井ホームが、東京都稲城市で開発を進める木造中層賃貸マンション「(仮称)稲城プロジェクト」が2021年5月に上棟した。稲城プロジェクトは、劣化対策等級で「3」を、断熱等性能等級で「4」を、一次エネルギー消費量等級で「5」を設計段階で取得している。
国内では、集合住宅のZEH(Net Zero Energy House)割合が1%未満と低く、一時エネルギー消費量削減によるCO2排出量の低減を目的に、ZEHの普及が求められている。また、木は鉄やコンクリートに比べて、製造時や加工時、建物建設時に必要とされるエネルギーが少ないため、CO2排出量のカットにつながる木造住宅に関心が寄せられている。
上記のようなニーズを踏まえて、三井ホームは、木を構造材に用いた木造マンションのブランド「MOCXION(モクシオン)」を立ち上げ、MOCXIONの第1号物件として、東京都稲城市で木造中層賃貸マンション「(仮称)稲城プロジェクト」の開発を進めており、2021年5月には稲城プロジェクトが上棟した。
2021年7月7日に開かれた稲城プロジェクトの構造見学会で、三井ホーム 施設事業本部 設計部長 高山康史氏は、「稲城プロジェクトは、国土交通省の“令和2年度サステナブル建築物等先導事業(木造先導型)”に採択されている。さらに、建物は、一般的な賃貸住宅と比べて、一次エネルギー消費量が30%少なくなる見込みであるため、“ZEH-M Oriented”の認定を取得する予定だ」と説明した。
稲城プロジェクトは、地上5階建て、1階はRC造で、2〜5階は木造枠組壁工法(ツーバイフォー工法)を採用している。屋根には、独自の高性能屋根断熱パネル「ダブルシールドパネル(DSP)」を設置。DSPは、ビーズ法ポリスチレンフォーム(EPS)を芯材とし、広葉樹のチップなどを積層・圧縮した構造用面材(OSB)を両面接着したサンドイッチパネルで、スレート瓦をのせた場合、水平距離で最大5メートル以上にわたり中間支持を不要とする。高断熱性については、DSPにより屋根自体が優れた断熱効果を発揮し、室内に外気温の影響を与えにくい。
さらに、DSPは、堅牢な断熱構造材のため屋根型を選ばず使え、断熱と気密の施工を不必要とし、作業工程はパネルをのせるだけで工期の短縮に役立つ他、石こうボードなどの耐火被覆で耐火性能を確保でき、環境性では日本建材・住宅設備産業協会の「ホルムアルデヒド発散等級表示登録書」で最も発散量の少ない表示を取得している。
建物の1階には、三井不動産グループの保有林で伐採適齢期を迎えた木材を内装材と軒天仕上げ材に用いるエントランスホールを配置する。エントランスホールには、顔認証システムで解錠するオートロックドアを備える。顔認証システムは、マンション内のエレベーターとも連動し、入居者がエントランスホールから居住する部屋の階まで非接触で足を運べる環境を構築する。
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