2021年の動向を予測するために、将来の売上高動向を示す先行指標となる手持ち工事高(工事請負金額のうち、未着手の工事に相当する金額)の推移を見ると、減少傾向ではあるが、8月に前年同月を下回った以外は辛うじて前年同月レベルはキープ(図表4)。民間、公共別では、民間工事が減少するなかで、公共の工事が前年を上回っており、建設市場を下支えしている(図表5)。
次に、同じく将来の売上高動向を示す、先行指標となる元請受注工事高の推移は、最大の受注月である3月に前年同月増減率▲21.6%と大幅に減少し、その後も減少傾向が続いている(図表6)。
民間と公共の受注別では、民間からの受注が8月以外は全ての月で前年同月を下回っているのに対して、公共からの受注は1月と8月以外は前年同月を上回っており、比較的順調に経過している(図表7)。
手持ち工事高は前年ぎりぎりの水準であり、受注高については公共工事が下支えしながらも、民間工事の減少により前年割れとなっている状況からは、2021年の建設市場は縮小傾向になる可能性が高いことが予想される。
ヒューマンタッチ総研所長 高本和幸氏は、「2020年は東京オリンピック・パラリンピック関連の需要が減少するとともに、コロナ禍による民間建設投資減少の影響もあり、建設市場は縮小傾向で推移し、それに伴い建設技術者への人材需要も低下。しかし、人材需要が低下したとはいえ、依然として有効求人倍率は高水準であり、建設技術者の人材不足の状況は続いている」と話す。
2021年については、「政府などの公共機関による建設投資が堅調に進むなか、コロナ禍の影響で民間の建設投資が弱含みで推移すると思われ、建設市場全体としては縮小するのではないかと考えられる。それに伴って建設技術者への人材需要もさらに低下することが予測されるが、2021年1月の建設技術者の有効求人数を見ると、前年同月比1.5%増、新規求人数は同15.3%増と増加に転じている。また、厚生労働省の労働経済動向調査による建設技術者の過不足判断DIでは、8月調査の44ポイントから11月調査では53ポイントに上昇。これらの状況に加えて、現状における建設技術者の需給ギャップの大きさ、生産年齢人口の減少が続くことなどを踏まえると、今後のコロナ禍による民間建設投資の減少度合いにもよるが、建設技術者の不足は一定レベルで続くことも考えられる」とコメントしている。
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