安全性の確認には、地盤が弱いとされる関東地盤の地震周期も考慮し、東京・千代田区丸の内に建築する想定でのシミュレーションも試した。結果、相模トラフを震源とするマグニチュード8クラスの大地震でも、建物が倒壊しない安全性を確認した。
このビルの場合、使われる木材の量は約18万5000立方メートルにも上る。これは住友林業が1年間に供給する新築の木造住宅8000棟の構造部分に使われる木材に相当し、約14万トンのCO2が固定できる計算となる。また、このCO2の排出量は、ビルを従来のように鉄骨で作った場合と比較すると、約9万トンも抑えられる。
中嶋氏は、維持管理や解体までを含めた建物のライフサイクル全体でのCO2排出量でも、木造ビルは優位にあると強調する。W350計画は、公式発表から2年が経過するが、その間、さらに鉄骨量を減らすべく構造関係の検討を進めてきたという。
住友林業では、W350計画の実現に向け、その基礎となる技術を投入した新研究棟を新設した。中嶋氏は「新研究棟を拠点に、木の価値を高める研究をより進めていく」と語る。
新研究棟には、部材と部材の結合を強固にする「ポストテンション技術」が使われている。ポストテンション技術は、木材の内部に鋼棒を通し、上下からテンションを掛けるもの。こうすることで結合部の剛性を高められ、地震などで傾いても元の状態に戻るような作用が働く。
ちなみにアンカーボルトは交換でき、鋼棒にテンションを掛け直すことで建物の修復も可能になる。中嶋氏は、ポストテンション技術のこのような特徴を「BCPを考えたときに、このような技術が生きてくるのではないか」とした。
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