鹿島の“シチズンデベロッパー”実践例、協力会社の生産性向上と技能伝承を「Power Platform」で実現導入事例(2/3 ページ)

» 2020年12月08日 06時11分 公開
[石原忍BUILT]

内装工事、建具施工、建材運搬の3つを対象に独自システムを開発

 Microsoftのプラットフォームを用いて鹿島建設が自社開発したシステムが「内装工事進捗管理システム」「建具施工進捗管理システム」と、外部の協力を得て実用化した「建設資材運搬システム」の3つ。

 このうち、内装工事ではこれまで、複数の工事をバラバラの担当工事会社が受け持ち、前の工程が終わらなければ次に移れないため、元請け社員が遅れている工程を追い回しているのが現状だった。仮に、1000戸以上の膨大な戸数のマンション工事などでは、協力会社が「部屋名×工程名」の表に、手書きで色塗りをして部屋ごとの進捗具合を管理していた。しかし、工事事務所に立ち寄る手間や塗り忘れ、リアルタイム情報ではないことがネックとなっていた。

 その点、内装工事進捗管理システムでは、協力会社が完了した工程と該当の階数及び部屋番号をスマホで入力すると、ロボティクス技術によるプロセス自動化のRPA「Microsoft Power Automate」で処理され、ファイル共有サービス「Microsoft SharePoint」上の管理表がリアルタイムで色塗りされる。関係者は、手持ちのスマホや現場事務所のPCからいつでも確認することができるだけでなく、完了報告後には次の工程担当者にメールが送付される機能も搭載されている。

「内装工事進捗管理システム」での工事完了の報告画面
「Microsoft SharePoint」上の進捗管理表と完了通知

 内装工事進捗管理システムは既に大型マンションやホテルの3現場に導入済みで、複合施設や大学の新築工事にも採用が決定している。現場適用の効果としては、LGS・ボード工事では1人当たりでこなせる作業量が16%向上し、クロス工事は26%アップした。工程ごとの作業量の向上が、工程数、部屋の数だけ掛け合わさって倍々に上がるため、1000戸以上あるような集合住宅などでは、工期短縮の影響は測り知れないものとなった。

内装工事システムを応用した「建具施工進捗管理システム」

 建具施工進捗管理システムは、建具の中でも扉や窓の取り付け工事を対象としている。建具工事は内装工事と同じく、墨出しから、搬入、先行モルタル、枠取り付け、床モルタルまで複数の工程から成っており、建具工事が終わらなければ内装工事に移行することができなかった。そのため、横浜支店の現場所長から、内装工事進捗管理システムを建具施工に応用できないか?と提案されたことが契機となった。

 システムでは、工事が完了後にエリア名、建具番号、完了工程名の3つをスマホで入力すると、SharePointの管理表が即時反映され、データ分析「Microsoft Power BI Pro」のデータビジュアル化ツールで、図面上の建具枠内または完了工程名を墨出しが桃色、斫りが水色、建具搬入が黄色などに色分けされる。図面上で各工事の進み具合がフロア単位で俯瞰できるため、遅れている工程を見過ごしてしまうリスクを減らせる。現在はまだ試験的に運用している段階だというが、図面上での色分けなどの追加機能も備わっているため、内装工事よりも作業効率が改善されることが期待されている。

建具施工進捗管理システムでの工事完了の入力と進捗管理表
図面上で各建具の工事状況を色分けで表示

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