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» 2020年12月08日 06時11分 公開

鹿島の“シチズンデベロッパー”実践例、協力会社の生産性向上と技能伝承を「Power Platform」で実現導入事例(1/3 ページ)

協力会社の非効率な生産性と技能伝承の壁が建設業界の課題として存在する中、鹿島建設 横浜支店では、協力会社の作業効率を改善することで解決を目指すべく、Microsoft Power Platformを活用して、「工事進捗管理システム(内装・建具)」を自社の事務系社員が開発した。さらに、技能伝承をデジタル技術で代替することも見据え、2021年から現場適用を予定する「建設資材運搬システム」では、ベテラン調整係の暗黙知をデータ化する基盤の整備も検討している。建設業でのDXとシチズンデベロッパー実践のケーススタディとして、鹿島建設の事例を紹介する。

[石原忍,BUILT]

 日本マイクロソフトは2020年11月10〜13日、リモートワークセミナー「お客様の取り組みに学ぶ、ニューノーマル時代リモートワーク最前線」をMicrosoft Teamsによるオンラインライブで開催した。

 会期中のセッションのうち、2日目に登壇した鹿島建設の「協力会社とともに進める働き方のニューノーマル−Microsoftソリューションを活用した建設業におけるDXとシチズンデベロッパーの実践−」と題した講演をレポートする。スピーカーは、鹿島建設 横浜支店 建築部建築工事管理グループ 鹿田康晴氏。

協力会社が抱える“人手不足”と“技能伝承”の課題

鹿島建設 横浜支店 建築部建築工事管理グループ 鹿田康晴氏

 鹿田氏は、鹿島建設入社後、数理系総合職に就き10年次を迎える社員。業務では、建築現場のICT化推進を担当しているという。

 一般的な工事の前提として、どの工事にも共通することだが、施主が鹿島建設のような元請けに発注し、元請けが計画した流れに沿って協力会社が工事を行っている。この際に鹿田氏が重要だとするのは、「実際に現場で汗水流して建物を造るのは、協力会社の技能者だということ。協力会社無くして、元請け会社の仕事は成り立たない」と訴える。

 こうした中で鹿島建設は、協力会社が抱えている“人手不足”と“技能伝承”の2つの課題に着目。それぞれの原因として、人手不足は社会全体の人口減や3Kのイメージが根強いイメージから入職希望者の減少があり、技能伝承は業界でいまだに見て覚えるの慣習が残っている一方で、高齢化とともに熟練者の離職が増えつつあり、次の世代に技能を伝えられていないことが背景にある。

 とくに人手不足については、一層の拍車を掛ける業務上の問題点が存在する。例えば1日で壁1枚をA〜Cの工程で完成する仕事があった場合、実際には各工程の間に待ち時間が発生してしまい、次の工程の時間が逼迫してしまうため、その穴を埋める作業員を増員しなくてはならなくことが多々ある。多数の技能者を投入することで、自ずと人手不足に陥り、1人当たりの賃金も下がってしまう。

 待ち時間が生じる理由は、建設業の産業構造がピラミッド構造で、協力会社間の工事状況を情報共有するのに時間を要し、前の工程が終了したことを知るのが常時遅れることに起因する。

 こうした工事進捗状況の遅延に対し、鹿島建設では各社の工事進捗を見える化することで情報をフラットにする仕組みを考案した。この仕組みでは、協力会社の技能者が持つスマートフォンで、工事完了を報告したデータがプログラム上で処理され、Web上で可視化される。他社の工事状況をいつでもどこでも手軽に確認できれば、即受け持っている工事に入れ、待ち時間の短縮につながる。

工事進捗状況の見える化

 同様に技能伝承に対しても、協力会社にスマホの専用アプリを提供して、言語化しにくい“暗黙知”となっているノウハウをデータとして蓄積し、AIが学習することで未熟な技能者を補助する独自の枠組みを整備することで解決を目指した。

 具体化するために必須だったのが、MicrosoftのAIやRPA(Robotic Process Automation)など、さまざまなアプリを集積したプラットフォーム「Power Platform」。Power Platformには、モバイル端末から入力したデータを適切に処理し、見える化するためのツールも用意されている。さらに、Microsoft 365やAzureと組み合わせることで、多様なシステム開発をスピーディーに行える利点がある。

Microsoftのアプリプラットフォーム「Power Platform」をコア技術として活用
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