デジファブが建築設計者にとって距離の近い存在となれば、設計から製造、その先には施工にもつながっていく。仮に、ShopBotやRoverで製造された木材パーツに番号が振られ、どの順番で組み立てれば良いのかが現場で一目で分かれば、施工の効率化がもたらされる。
デジファブによる製造から施工への橋渡しについて秋吉氏は、「今はまだ現場で加工している部材を、製造段階で正確に部品化していれば、非住宅の領域でも施工の合理性は格段に上がる。言い換えると、製造で施工の工期や品質をコントロールできるようにもなる。施工の自動化を突き詰めれば、究極的には現場でのロボット施工に到達するだろうが、その場合でも、デジタルで作り出した部材をロボットがどう動いて組み立てるか?だけが問題になるだろう。デジファブは、建材・部材を加工して現場で組み立てる“プレファブリケーション”をより進化させ、自由度が高く、安価でスピーディーな設計・製造・施工の連続したフローを実現させる」と話す。
VUILDが事業の柱とするハードウェア販売「ShopBot Japan」とソフトウェア開発「EMARF(エマーフ)」ともう一つ、建築設計事務所としての「VUILD ARCHITECTS」でも、設計→製造→施工の連続性を途切れさせない独自の設計手法を採り入れている。
その最たる作品としては、「SDレビュー2019」に入選した大学構内の木造屋外施設「学ぶ、学び舎」が代表例として挙げられる。学ぶ、学び舎のプロジェクトでは、3Dモデリングツール「Rhinoceros」とプラグインソフト「Grasshopper」を使用し、グローバルでも潮流となりつつある次世代の設計手法“コンピュテーショナルデザイン”で行った。
自社でコードを記述してプログラムを組み、多様な形状パターンを自動生成。部材の製造工程では厚さ約210ミリの板を削って曲面を作るため、削り方の角度や雨水が流れることをプロフラムで判定しながら、最終的な板割り後のパーツ単位までを含めてコンピュテーショナルデザインで設計した。当然ながら、板の枚数が増えれば増えるほど、コストに跳ね返るので、最低限の枚数で済むようにも、複数のプログラムを連動させながら検討を重ねた。この案件は言わば、単に意匠設計だけでなく、全ての生産工程も設計段階で策定するという、設計までフロントローディングを前倒しした先進的な試みとなっている。
また、最近手掛けた物件では、川崎市のレーザーカッターを保有する町工場の協力を得て、金属系のマテリアルと木の融合にも挑戦。面白法人カヤックが鎌倉の民家2棟をリノベーションした敷地の中庭に、オフィスとオフィスをつなぐ、社名にちなんだカヤック2艘が宙に浮いたパーゴラ(木造の日陰棚)を構築した。
設計では、コンピュテーショナルデザインで寸法と形状の異なる接合部のデータをモデリングした。次の製造フェーズでは、構造体の端部にある金属の柱のデジタルデータを金物製作の工場に渡し、レーザー加工機で切断して杉材のCLTと組み合わせたという。
VUILD ARCHITECTSの強みとなっているコンピュテーショナルデザインは、自身でも得意分野とする秋吉氏の他、建築の世界ではまだ希少なプログラムが組める社内のデザイナー数十人によって支えられている。
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