ここまで説明してきたCCE活用の利点は大きく2つある。1つ目は、ステップ1の「発生してほしくない事象」とステップ4の「セキュリティ対策」が視覚的にスムーズに連結しており、セキュリティに詳しくないビルシステム関係者でも、必要なセキュリティ対策について理解がしやすい点だ。また、対策の優先順位付けも、「コスト」と「導入時のシステム影響」という分かりやすい指標で行うことができる。
もう1つは、CCEと本ガイドラインを使用することで、ビルシステム・機器の「リスク値」を求めるといった特別な専門知識を要することなく、セキュリティ対策を検討することができる点である。これによりステップ2の最後からステップ4を実施するセキュリティ担当者の負荷を下げることができる。
実は、ここまで説明してきたCCEの検討手法は、アイダホ研究所が開発したCCEの考え方をもとに、産業サイバーセキュリティセンター第1期卒業生(2018年6月卒)の米永雄慶氏により開発されたものである(米永式CCEメソッド)。そして、このメソッドをカリキュラムで学んだ、第2期卒業生有志によって作成された「ビルシステムにおけるサイバー・フィジカル・セキュリティ対策ガイドライン 〜ファーストステップガイド〜(座談会記事参照)」の分析手法にも反映されている。今回の記事作成にあたり、第2期卒業生有志からのご厚意で、関係者限りであるガイド内の図表の引用をさせていただいた。業界啓発のためのご協力に対して深謝したい。
第7回は、CCEを用いて、個別のビルシステムのセキュリティ対策をどこまで講じるのかを検討する具体的な例を示した。
■CCEの4つのステップを実際のビルシステムに適用する方法は?
⇒ ステップ1の「発生してほしくない事象」を起点にして、ステップ2ではFTA、ステップ3では、サイバー・キル・チェインを活用して、ステップ1の事象を発生させるようなサイバー攻撃の経路を検討し、ステップ4では、それぞれの経路の攻撃段階の成功を妨げるセキュリティ対策をマッピングする。セキュリティ対策の優先順位は、「コスト」と「導入によるシステムへの影響」をもとに、ビルシステム関係者で協議して決定する。
■CCEをセキュリティ対策検討に用いるメリットとは?
⇒ セキュリティに詳しくないビルシステム関係者でも、発生してほしくない事象とセキュリティ対策の関係が分かりやすい点。また、本ガイドラインと併用することで、セキュリティ担当者の負荷を下げることができる点。
次回は、本ガイドラインの内容に戻り、第3章の3.5以降から第5章までの内容についての解説を行う。
★連載バックナンバー:
「サイバー・フィジカル・セキュリティ対策ガイドライン」詳説
■第6回:BASセキュリティ対策をどこまでやるか検討するための手法「CCE」とは何か?
■第5回:ビルシステムならではの“リスクポイント”と特有の事情
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