【第2回】日本のBIM先駆者が示す「BIMが目指すゴールへの道標」BIMで建設業界に革命を!10兆円企業を目指す大和ハウス工業のメソッドに学ぶ(2)(3/3 ページ)

» 2020年04月15日 10時00分 公開
前のページへ 1|2|3       

BIMの本質は一気通貫にあらず

 一気通貫BIMは、単体の建物における「ビルディング・ライフサイクル」で、BIMモデルを中心に置き、連携させてゆくといった概念である。しかし、当社の建築部門は、年間1200棟近くの建物を作っている。これら複数建物の情報活用は、「一気通貫BIM」では、想定されていない。

 RevitなどのBIMソフトでは、プロジェクトに含まれている情報を扱うことはできるが、複数の建物の情報を網羅することはできないので、データベースに情報を連携させる必要がある。それが下記のイメージである。ここで、「Digital Patch」という単語が登場する。

 Digital Patchは、「業務のデジタル化」を示し、BIMの移行により「一気通貫BIM」が実現した状態を指す。その「デジタル情報」を「情報データベース」で統合し、デジタル施工機器やセンサーなどの「プラットフォーム」を作り、AIなどへの活用につなげることが、デジタルインテグレーション(DI)の考え方である。

建築情報のプラットフォームのイメージ

デジタライゼーションとデジタルトランスフォーメーション

 デジタライゼーションとDX(デジタルトランスフォーメーション)について触れておきたい。デジタライゼーションとは、「デジタルテクノロジーを使って、既存製品の付加価値を高めたり、業務の効率化を図ったりする」ことである。BIMをデジタルテクノロジーと捉えると、「設計・施工業務をBIMに移行することで、業務の付加価値を高め、効率化を図ることができる」と言い換えられる。デジタルトランスフォーメーションとは、「デジタルテクノロジーを使って、経営や事業の在り方、生活や働き方を改革する」ことであり、最終的に目指す姿はここにあるのだと考えている。

※デジタライゼーションは、BIMへの移行と考えられるのでDXの成長指標としてはDP(Digital Patch)と位置付けられる。

デジタライゼーションとデジタルトランスフォーメーション

 当社では、このような考え方を基に、BIMへの移行を進めるとともに、建物情報の「プラットフォーム」の核となる「データベース」の構築に着手した。当社は本年度(2020年度)に設計BIMへ全面移行する計画だが、施工BIMに関しては2020年度から移行を始めていく。設計BIMが完成しないと、次工程である施工BIMが進められないからである。この取り組みと同時に、「プラットフォーム」や「データベース」にも取り組みを始めることでBIMが目指すゴールへと進んでゆきたい。

BIMの成長ステップとDXの成長ステップ

 今回は、「BIMが目指すゴールへの道標」として、私が提唱するEBL(Extended BIM Level)と、それを作った経緯について解説した。BIMを建設業界の革命と考えるからには、業界を変えることができる取り組みをしなければならないので、DXをゴールと定め、そこに続く道標として、EBLを定めた。

 次回からは、EBLにおける各段階の進め方を、私の経験を織り交ぜながら、具体的に説いてゆく。

著者Profile

伊藤 久晴/Hisaharu Ito

大和ハウス工業 建設デジタル推進部(旧・BIM推進部) シニアマネージャー(2020年4月1日現在)。2006年にオートデスクのセミナーでRevitの紹介をし、2007年RUG(Revit User Group Japan)の初代会長となって以来、BIMに目覚める。2011年RUG会長を辞して、大和ハウス工業内でBIMの啓蒙・普及に努め、“全社BIM移行”を進めている。「BIMはツールではなく、プロセスであり、建設業界に革命を起こすもの」が持論。

近著に「Autodesk Revit公式トレーニングガイド」(2014/日経BP)。

前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.