一気通貫BIMは、単体の建物における「ビルディング・ライフサイクル」で、BIMモデルを中心に置き、連携させてゆくといった概念である。しかし、当社の建築部門は、年間1200棟近くの建物を作っている。これら複数建物の情報活用は、「一気通貫BIM」では、想定されていない。
RevitなどのBIMソフトでは、プロジェクトに含まれている情報を扱うことはできるが、複数の建物の情報を網羅することはできないので、データベースに情報を連携させる必要がある。それが下記のイメージである。ここで、「Digital Patch」という単語が登場する。
Digital Patchは、「業務のデジタル化」を示し、BIMの移行により「一気通貫BIM」が実現した状態を指す。その「デジタル情報」を「情報データベース」で統合し、デジタル施工機器やセンサーなどの「プラットフォーム」を作り、AIなどへの活用につなげることが、デジタルインテグレーション(DI)の考え方である。
デジタライゼーションとDX(デジタルトランスフォーメーション)について触れておきたい。デジタライゼーションとは、「デジタルテクノロジーを使って、既存製品の付加価値を高めたり、業務の効率化を図ったりする」ことである。BIMをデジタルテクノロジーと捉えると、「設計・施工業務をBIMに移行することで、業務の付加価値を高め、効率化を図ることができる」と言い換えられる。デジタルトランスフォーメーションとは、「デジタルテクノロジーを使って、経営や事業の在り方、生活や働き方を改革する」ことであり、最終的に目指す姿はここにあるのだと考えている。
※デジタライゼーションは、BIMへの移行と考えられるのでDXの成長指標としてはDP(Digital Patch)と位置付けられる。
当社では、このような考え方を基に、BIMへの移行を進めるとともに、建物情報の「プラットフォーム」の核となる「データベース」の構築に着手した。当社は本年度(2020年度)に設計BIMへ全面移行する計画だが、施工BIMに関しては2020年度から移行を始めていく。設計BIMが完成しないと、次工程である施工BIMが進められないからである。この取り組みと同時に、「プラットフォーム」や「データベース」にも取り組みを始めることでBIMが目指すゴールへと進んでゆきたい。
今回は、「BIMが目指すゴールへの道標」として、私が提唱するEBL(Extended BIM Level)と、それを作った経緯について解説した。BIMを建設業界の革命と考えるからには、業界を変えることができる取り組みをしなければならないので、DXをゴールと定め、そこに続く道標として、EBLを定めた。
次回からは、EBLにおける各段階の進め方を、私の経験を織り交ぜながら、具体的に説いてゆく。
★連載バックナンバー:
『BIMで建設業界に革命を!〜10兆円企業を目指す大和ハウス工業のメソッドに学ぶ』
■第1回:日本のBIM先駆者が警鐘を鳴らす「なぜ日本のBIMはダメなのか?」
■第2回:日本のBIM先駆者が示す「BIMが目指すゴールへの道標」
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