鹿島建設はこのほど、構造計画研究所が提供するシステムをカスタマイズし、大規模水害が発生した際に、河川工事を継続できるか判断可能な新システムを開発した。
鹿島建設は2020年3月16日、構造計画研究所が展開する「力学系理論を用いた河川の水位予測システム」をカスタマイズし、新潟県で施工中の大河津分水路新第二床固改築1期工事に適用したと発表した。
近年、降雨の激甚化に伴う大規模な水害が相次いでおり、河川工事では出水で資機材が流されるなどの被害が発生している。被災した際には、作業継続の可否や避難を判断するために、洪水時の水位予測技術が求められる。
一方で、河川の水位予測は従来、物理現象を数式でモデル化して行われてきたが、地形データの入手や陸域から流入する水量の解析などに時間を要するといった問題があった。
今回導入したシステムはこういった課題を解消している。力学系理論という数学の考え方に基づく予測手法を採用しており、対象地点における6時間後の水位を推測する。予測手法は、構造計画研究所と東京大学が共同開発したもので、水位の目算に必要なデータ量が少なくても精度の高い推定が進められる。
鹿島建設は、力学系理論を用いた河川の水位予測システムを大河津分水路新第二床固改築1期工事に導入するにあたり、発注者と協力し、現場に近い地点の水位を割り出すモデルを作成した。また、高精度な予測を実現するため、予測モデルに入力する水位と雨量のデータ範囲をAIで算出する仕様に変更するなど、カスタマイズを実行した。
カスタマイズされた水位予測システムは、施工管理で役立つように水位から換算した流水量も画面に表示する。作業可否や避難を判断する水位と流量のレベルは、「潜水作業が可能なレベル」「台船作業が可能なレベル」「作業を一時停止するレベル」「避難判断レベル」の4種類を備えている。
画面には各レベルを超える確率が映される他、各レベルを超過する水位や流量が予期されると登録者へメールで通知される。
大河津分水路新第二床固改築1期工事には、新システムを2019年10月から適用しており、これまでに取得した予測地点の実測水位と予測水位を比較した結果、大きな誤差がないことを確認している。現状の河川水位がリアルタイムで分かるとともに、6時間後の水位を定量的に測れるため、各種作業の実施や継続の可否、避難の要否を判断することが容易となった。
大河津分水路新第二床固改築1期工事の発注者は、国土交通省 北陸地方整備局 信濃川河川事務所で、場所は新潟県長岡市寺泊野積地先。工期は2019年2月13日〜2023年3月31日で、施工者は鹿島建設、五洋建設、福田建設で構成される特定建設工事共同企業体。工事諸元は、本堤工や減勢工、護床工、仮設工。
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