大林組と北川鉄工所は、ダム建設工事で大型のタワークレーンを使ってコンクリートを自動運搬するシステムを共同開発した。
大林組と北川鉄工所は、ダム建設工事を対象に、国内最大級のタワークレーンでコンクリートを自動運搬するシステムを実用化させた。新システムは、大林組が構想するAIやICTを駆使してダムの施工をオートメーション化する「ODICT(オーディクト):Obayashi-Dam Innovative Construction Technology」に集約し、今後の案件で積極的に導入していく。
コンクリートダムの建設では、クレーンでコンクリートを運ぶ際に、コンクリートとバケットの総重量が20トン近くに及ぶこともあるという。そのため安全に配慮して作業するためには、荷の振れを最小限に抑える熟練の技術が求められる。
しかし、長時間に及ぶ繰り返しの運搬は、オペレーターに負荷が掛かり、ここ最近は熟練オペレーターの不足も相まって、安全性の確保や作業の省人化は必須となっている。
大林組と北川鉄工所が開発した新システムは、国内最大級のタワークレーン(最大作業半径86メートル、定格荷重25トンのつり上げ能力)を用い、熟練者の操作を記憶し、再現する。
繰り返し運搬のオペレーションを自動化するため、産業用ロボットを制御する方法の一つ、記憶した操作を再生する「ティーチングプレイバック方式」を採用。この方式では、一度熟練オペレーターによる荷の振れを最小限に抑えた最適な運搬操作を記憶させることで、その動作を繰り返し再現する。仮に経験の浅いオペレーターが搭乗しても、熟練の技能者による最適な運搬が自動で繰り返されるため、経験は必要とならない。
クレーン先端部分の位置は、GNSSでリアルタイムに認識し、他のクレーンとの接近を検知。もし接近を検知した場合は、オペレーターへアラートを発するのと同時に、自動で停止して事故を防ぐ。将来は、複数台のクレーンをシステム上で運用し、1人のオペレーターが稼働状況を監視することで、省人化を図ることも見込んでいる。
また、オペレータの負担軽減という点では、自動運搬によってオペレーターはクレーン操作から解放され、監視作業に集中。単調な繰り返し作業をシステムに任せることで、人の作業負荷は大幅に軽減される。
現場への適用については、水資源機構が発注した三重県伊賀市の川上ダム本体建設工事に導入し、有用性を確認。川上ダムの規模は、堤高84メートル(堤項標高:EL.282メートル)、堤項長334メートル、堤体積45万7570立方メートルの重力式コンクリートダムで、2023年に完成する予定。現場では、AIやICTなどの最先端技術を駆使した施工のオートメーション化を計画し、20以上にも上る新技術の実用化を進めている。
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