3DCADと連動し概算総水量と経時流量変化量を算定、洪水時の流量観測を実現する長期無給電の計測システムi-Construction推進コンソーシアム「技術開発・導入WG」(下)(3/3 ページ)

» 2019年08月28日 07時00分 公開
[遠藤和宏BUILT]
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水位と堆砂を同時に測れるセンサー

 甲府河川国道事務所 調査第一課 河川調査係長の森瞭多氏は、洪水中の河床(河床高)変化を測れるソリューションを求めていることを明かした。

甲府河川国道事務所 調査第一課 河川調査係長の森瞭多氏

 甲府河川国道事務所の管理エリアに隣接する富士川は、日本有数の急流河川。流域からの土砂流出が非常に多いため、洪水時には河川浸食、局所洗堀による構造物の被災、土砂堆積を起因とする河積不足の危険性が高い。

 「予防保全的な河道の計画、整備が不可欠であるが、そのためには洪水中にどのように河床が変化しているかを把握することが重要になる。過去に砂面計を設置していたが、洪水時の外力や経年劣化で現在機能していない上、機器の特殊性からメンテナンスも行えない。こういった課題もあり、急流で土砂移動の大きい富士川で、高精度かつ継続的に洪水中の河床高の変動を測れる技術を望んでいる。雨天と夜間の測定ができることが前提となる。現場試行が可能な場所は、直轄管理区間の河道内で、特に釜無川での観測は必須。時期は通年を予定しており、規模は河川管理上支障の無いエリアを想定している」(森氏)。

 このニーズに対して、総合防災センサーメーカーの拓和 新技術開発センター 開発課兼企画部 課長の宮下勉氏は「水位と堆砂量を計測するセンサー」を訴求した。

拓和 新技術開発センター 開発課兼企画部 課長の宮下勉氏

 このセンサーは、取り付けるだけで、水位と堆砂量を測れる直接観測式のもの。圧力センサーやレーザを使わずに、河川水と堆砂の抵抗値を基に測定する。

 宮本氏は、「空気中と河川水・堆砂の抵抗値は明確に異なり、その抵抗値を連続で計測することで、水位だけでなく堆砂量も同時に測れるセンサー。各電極は独立しており、ごみや雨水が水位と異なる高さの電極に付着しても誤検知しない仕様で、河川の濁度にも影響を受けない。ABS樹脂製で耐久性は高く、量水板と同様の施工で容易に取り付けられる」とコメントした。

 現場導入のメリットについて、「無人で連続して水位と堆砂量を計測し、情報を取得できる。堆砂量のデータを元に、洪水時の河床高の変動を測れる上、太陽電池で動くため、商用電源は不要。センサーと記録装置の通信はワイヤレスで行える。現場試行では、動作確認や観測データの検証、得られた情報の回収方法の確立を進める」(宮下氏)。

長期無給電の流量計測システムの機器構成図。センサー(左下)、記録装置(左上)、太陽電池とソーラパネル(右)

 課題について、センサーはH型鋼などの構造物に取り付けなければいけないことや記録装置も堤防といった安全な箇所のポールに設置する必要があることを列挙した。

 この他、LoRaWAN、SigfoxなどのLPWA通信網とクラウドに対応していることを利点としてPRした。

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