セミナー後半では、大西氏はドローンと航空写真の測量の違いについて解説した。
航空写真測量は、ドローンより耐風性が高い上、広域の計測に向いているが、天候に左右されるため予備日を設けなければならない。事前計画も必要で、パイロットや撮影士という専門スタッフが求められる。機材は、セスナ、専用カメラなどで、数億円以上かかる場合もある。航空レーザー測量で3D点群の生成は可能で、航空写真測量でも3D点群は作れるが、写真枚数が少ないため、品質は低いという。
一方、ドローンは、狭域の測量に向いており、現地で待機し、条件が整った場合、迅速に作業に移れる。人口集中地区以外であれば、すぐに測量に応じられ、自社の少ないスタッフでの運用が行える。機材費用は写真測量で最大500万円で、レーザーでは最大3000万円。写真からは色付き点群を作成でき、レーザーでは3D点群を造り出せる。
この他、地球に降り注ぐ宇宙線「ミューオン」を利用した土壌水分の見える化を実現するシステムも紹介した。
ノイズをこれまでの100分の1に下げたミューオン受信センサーを搭載した高感度カロリーメーターを用いたミュオグラフィー技術は、ミューオンを利用し、地中内部の降水に伴う水分量の変化を動的に観測できるもの。
大西氏は、「この技術で、降水の浸水状態、地下水の視認できない水路、後背流域からの地下水供給路が明らかになり、当該斜面を不安定にするメカニズムの発見を実現する。このように、斜面安定評価の新分野を構築するとともに、豪雨時の道路監視を目的とした土壌水分モニタリング手法に使える可能性がある。東大地震研究所は、ミューオンを測定することで、2013年に噴火した薩摩硫黄島のマグマの動きを撮影することに成功している」と語った。
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