清水建設が“令和の大嘗宮”設営に着手、古代工法「黒木造り」で皮付き丸太110m3使用古建築

» 2019年08月09日 05時33分 公開
[BUILT]

 清水建設は2019年7月26日、11月14/15日に執り行われる令和の大嘗祭(だいじょうさい)の会場となる「大嘗宮」の造営工事に東京・千代田区の皇居・東御苑で着手した。

神社仏閣の経験者を結集した全社横断のプロジェクト

 大嘗宮は、大嘗祭の儀が執り行われる大小約40棟の建屋から構成される施設。歴史上さまざまな規模・形態で推移してきたが、近代以降は明治大嘗宮を経て、大正・昭和に定型化され、平成度は、昭和大礼の際の大嘗宮に準じて設営された。

 令和の大嘗宮では、基本的には前回の平成度に準拠しつつ、一部施設の規模変更や儀式の本義に影響の無い範囲で、屋根材や構造材などを見直し、建設コストを抑えながら設営する方針が宮内庁から示されている。

平成度と令和度変更案の大嘗宮 出典:宮内庁

 工事概要は、いずれも平屋で、最高高さ約9メートル、総延べ床面積は約2600平方メートルを見込む。施設のうち大嘗祭の祭場となる「悠ゆ紀き殿でん」「主す基き殿でん」など約30棟の殿舎は木造建築となる。悠紀殿と主基殿および廻立殿は、皮付きの丸太をそのままを使用する「黒木造り」と呼ばれる古代工法そのままの簡素な造りとなり、柱は唐松の黒木、悠紀殿と主基殿の2棟は屋根上に千木(ちぎ)と勝男木(かつおぎ)を備える。黒木造り建物の延べ床面積は合計で約1280平方メートル。

令和大嘗宮のイメージ 出典:宮内庁

 大嘗宮の造営に当たり、60年に1度の解体改修を行った「出雲大社平成の大遷宮」を納めた熟練の工事長を責任者に据え、神社仏閣の経験者を集めた全社横断のプロジェクトチームを結成した。さらに全国の名だたる宮大工の棟梁を訪ね、北陸、関東、東北地方で宮大工を確保。工事が最盛期を迎える8月下旬からは、120人に上る宮大工が腕を競うことになるという。

 殿舎を形どる木材の使用量は約550立方メートル(黒木造り用皮付き丸太は110立方メートル)。主な木材は、長野県産の唐松皮付丸太、静岡県産の杉皮付丸太、北海道産のヤチダモ皮付丸太で、その他にも、奈良県、京都府などからも木材を調達し、宮大工の工場で加工を施し、現場に搬入する。

 施工者の選定は、宮内庁発注の一般競争入札で行われ、2019年5月10日の開札で、清水建設が9億5700万円(税込み)で落札した。

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