ジョンソンコントロールズが取り組む設備業務のIT化、“Azure”でBASの不具合を自動検知BAS(1/2 ページ)

ジョンソンコントロールズは、建設業界が将来直面する人手不足や技術継承といった課題に対して、AI・ICTを導入し、ビル設備の設計/計装/サービスの業務プロセスを標準化し、高い技術レベルの安定的な維持と、ワークスタイルの変革に取り組んでいる。

» 2019年07月08日 05時35分 公開
[石原忍BUILT]

 ジョンソンコントロールズは2019年7月4日、サービスレベルと従業員のワークライフバランスを向上させ、イノベーションの加速を実現するAI・ICTを用いた“業務効率改善施策”を発表した。

ITで設備業務のプロセスを標準化し効率化させる

ジョンソンコントロールズ社長・吉田浩氏

 同日には、東京都渋谷区の本社で代表取締役社長・吉田浩氏が、ビル設備業務に新しいテクノロジーをどの様に採り入れているか、具体的な施策を解説した。

 吉田氏によれば、現在の建設業界は、東京2020大会の追い風を受け、競技施設をはじめ、宿泊施設、商業施設、交通インフラなどが高需要となり活況を呈している。2020年以降も、都市圏の再開発や建物の老朽化による維持修繕、リニア新幹線開通と連動した地方での都市開発などの好材料があることに加え、建設会社が新築工事を先行させているため改修工事の受注残があり、好調がしばらくは続くと予測する。

 需要が右肩上がりの中、技能の継承と労働力確保の問題は深刻で、技能労働者の約3分の1が55歳以上に対し、29歳以下は約11%と、次世代への技術継承は課題となっている。さらに人手事態も、団塊世代の退職によって10年後には労働人口が130万人にまで減ってしまう。

 また、建設業界特有の問題として、現場技術者の長時間労働が常態化し、全産業と比較しても年間で300時間以上長く、約5割が4週4休以下と、ネガティブなイメージから採用が進まず、悪循環を招いている。

 ジョンソンコントロールズでは、こうした課題に対し、ITを活用することで、ビル設備の施工、サービス、設計の各業務プロセスの標準化と効率化に取り組んでいる。

 ビルの空調設備は、製品を大量に生産するのではなく、一品一葉の提供のため、業務を標準化するのは難しいとされている。そこで施工面では、入社2〜3年目のプロジェクトマネジャーを6カ月のローテーションで、「プレワークグループ」に配属。一般的に大型物件では、新人は簡単な作業に多くの時間を取られがちだが、多彩な物件を担当させることで知識と経験を蓄積させ、人材育成につなげる。プレワークの試みは1年半前にスタートし、今では半分ほどの物件に採用。効果として、処理能力が2.5倍となり、若手5人のチームで7.5人分の作業時間を吸収するほどの成果が得られた。

施工業務プロセスの標準化と効率化

 サービス業務では、本社に事務処理を集約した「シェアードサービスセンター」を設立。今まではエンジニア自身が現場から戻って、機器の修繕や交換の見積もりを作成していたが、この業務をセンターに一元化した。納入したBAS(ビルオートメーションシステム)の長期修繕計画も、クライアントの予算に応じて立案し、予防提案に役立てている。

 横展開として、コールセンターやリモートオペレートセンター(ROC)の活用も進め、エンジニア派遣の迅速化、遠隔でのメンテナンス、24時間/365日オペレーションで運用している。

サービス業務プロセスの標準化と効率化
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