西松建設は、ボックスカルバートの側壁や橋脚の柱部など、コンクリートの壁面を均質に湿潤養生できる高保水性シート「モイスチャーウォール」を開発した。既に、東北地方の橋梁(きょうりょう)工事に、適用することが決まっているという。
西松建設は、コンクリートの壁面を均質に湿潤養生できる高保水性シート「モイスチャーウォール」を開発した。保水性に優れた特殊素材と、柔軟性のある基材を一体成形した独自の養生シートにより、一度の給水で長時間ムラなく湿潤状態を保つことができる。養生中のシートに水を再度補給する作業も、従来のマット状の養生材を用いた場合に比べ、簡単に行えるという。
コンクリート打込み後に行う“湿潤養生”は、コンクリートの品質や構造物の長期耐久性に左右するため、重要な工程とされている。しかし、鉛直面や傾斜面など、壁状のコンクリート面をムラなく湿潤状態に保つには、スラブのような水平面での養生作業に比べ、困難なのが実情だ。
散水や噴霧のみでは、給水頻度が多く手間がかり、一般的な不織布やスポンジタイプの養生マットは保水性が低く、湿潤状態を維持することができない。高い保水性を有したマットも製品化はされているが、水を含んだマットの密着力だけでは、日射や風によって、乾いて剥(は)がれるリスクがあり、乾いたシートに水を再度供給する作業はかなりの労力を要する。
西松建設が開発したモイスチャーウォールは、厚さ2ミリの特殊な保水素材を、厚さ6ミリのポリプロピレン製の基材に一体成形した高保水性シートを使用する。シートの重量は1平方メートル当り560グラム(吸水前)と軽量で、容易に折り曲げることができ、シート同士を嵌合(かんごう)して連続シートとして用いることも可能だ。
設置方法は簡単で、型枠を取り外した後、シート自体にバタ角を渡してフォームタイで固定。後は、シートの上方から、ポンプなどで水を定期的に自動供給して使う。シート自体は保水力が重量比で300%と高いため、施工条件にもよるが、1日1回程度の給水作業で十分に湿潤性が保たれ、養生管理が簡易的に行える。なお、転用は10回程度まで可能だという。
モイスチャーウォールは、湿潤養生の効果によってコンクリート表層部が緻密化され、中性化に対する抵抗性が高まるなど、コンクリートの品質向上に寄与する。この技術が対象とする構造物や部位は、比較的面積の大きな壁面で、ボックスカルバートの側壁や擁壁、橋脚の柱/梁(はり)部など。
今回開発したモイスチャーウォールは、東北地方で施工中の橋梁工事への適用が予定されている。今後は、コンクリートの品質向上に資する技術として、西松建設の施工物件への活用以外にも、技術提案を通じて普及を図っていくとしている。
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