ライカの地上型LSが“山陰道”の出来形管理に適用、設計3次元データとの比較で作業短縮地上型LS

カナツ技研工業が代表を務めるコンソーシアムによる「コンクリート橋台・橋脚」の出来形管理を効率化する技術試行で、ライカジオシステムズの地上型レーザースキャナー搭載トータルステーションが導入され、2018年12月から現場でのデータ取得を開始した。

» 2019年01月25日 06時00分 公開
[石原忍BUILT]

 ライカジオシステムズは、カナツ技建工業が代表となっているコンソーシアムに参加し、地上型レーザースキャナー搭載トータルステーション(TLS搭載TS)「Leica Nova MS60」を使用した出来形管理の効率化を図る技術の試行を開始した。

 コンソーシアムは、カナツ技建工業、ライカジオシステムズ、福井コンピュータ、山陽測器で構成。4社は、国土交通省が公募した「建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト」に応募した結果、「対象技術I:データを活用して土木工事における施工の労働生産性の向上を図る技術」の部門で提案技術が選定された。

 実際に適用した工事は、国土交通省 中国地方整備局発注の山陰道「静間仁摩道路大国高架橋外部工事」。橋台・橋脚のコンクリート構造物を対象に、TLS搭載TSを使用して3次元計測を行い、取得したデータを杭頭や躯体の出来形管理に利用することを試みる。

 また、3次元設計データと、完成した構造物をスキャンした3次元データを比べた座標値の較差で、新たな出来形管理の方法も試行する。

構造物3次元設計データと完成3次元計測データを活用した出来形管理 出典:カナツ技建工業

 試行で使用するデータは、構造物(杭・躯体)の3次元設計データと、TLS搭載TSで計測した構造物(杭及び躯体)の点群データ。点群からは、出来形管理に必要な場所打ち杭の杭径・杭芯、躯体の出来形寸法を求める。3D設計データとの組み合わせでは、新しい出来形管理値の提案として、場所打ち杭の杭芯や構造物の隅角点の座標データと、設計上の同点の座標値との較差から、X・Y・Z方向の偏差を求めて、出来形を確認する方法も試す。

スキャンした3次元の点群データと設計データを当社のTLS搭載TS上で比較した画面 出典:ライカジオシステムズ

 従来の出来形計測と出来形管理では、多くの計測や差異分析を手作業で行っていたため、時間や労力がかかってた。TLS搭載TSと3次元設計データを使った試行技術は、従来方法と比べて、作業時間の軽減をはじめ、立ち会い・出来形管理写真・出来形図の簡素化、計測作業の安全性向上などが、有効性として期待されている。それ以外にも、取得したデータの次の工程での2次利用や維持管理段階での展開も見込まれている。

 カナツ技建工業が代表を務めるコンソーシアムは、2018年度末まで、コンクリート構造物(橋台・橋脚)の出来形管理の効率化を図る技術を引き続き試行する。

 TLS搭載TSによる出来形管理は、2018年12月12日から実際にデータ取得を行い、これまでの2回の作業からは、作業時間の短縮や安全性の向上が確認された他、計測結果は出来形管理値として使用できる見通しが立ったという。

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