大林組は、BIMモデルをクレーンに取り付けたセンサーと連携させ、クレーン内のモニターにリアルタイムで操作量などを表示して情報化施工を可能にする「マシンガイダンス」を開発した。既に、5つの現場で導入実績があるという。
大林組は、BIM(Building Information Modeling)を活用させた3次元モデルと、クレーンに取り付けたセンサーから得る情報とを連携させ、オペレーターにクレーンの状況をリアルタイムに示して、安全で効率的なクレーン操作を支援する「マシンガイダンスシステム」を開発した。
建設現場の揚重作業で、クレーンを操作するオペレーターは、クレーン同士の衝突や近接する構造物との接触、重要無線通信の電波伝搬路妨害、航空法による高さ制限違反、敷地境界線からの越境などに細心の注意を払っている。
これまでにあった作業範囲の規制装置にも、禁止エリアへの接近をオペレーターに警告する機能はあったが、オペレーターが確認する画面は2次元で表示されるため、高さを把握しにくかった。
新たに開発したマシンガイダンスシステムは、3次元モデルを利用しているため、オペレーターが通常目視できないクレーンと周囲の位置関係を、タッチパネルの操作で任意の視点から、俯瞰的な画像で確認することができる。死角がある場合、夜間や悪天候時の視界が悪い状況でも、安全なクレーン操作が行える。
さらに、揚重部材を取り付け位置まで安全に運搬するため、必要な操作量をガイダンス表示する機能も備えている。
今回のシステムでは、コンピュータ上に構築した仮想空間で処理・分析・解析・知識化し、そこから得られた情報・計算値・推論値を現実世界へ反映させる取り組み「サイバーフィジカルシステム(Cyber Physical Systems、CPS)」の概念を取り入れている。3次元モデルで建設現場を再現したサイバー空間と、実際のクレーンの動きを融合させることで、情報化施工が実現した。
ガイダンスでは、無線センサーから取得したクレーンの動きを、建設現場を再現した3次元モデル上に反映させ、クレーン操作室内の専用タッチパネルに表示する。3次元モデル上では、施工対象物や周囲の構造物だけでなく、目に見えない電波伝搬路や航空法による高さ制限、敷地境界線なども“可視化”される。万一、禁止エリアに入りそうになった場合は、画面上に警告を発することで、侵入を未然に防ぐ。
また、AI技術も活用して、クレーンから下向きに設置したカメラ映像を基に、クレーンのフックや柱、作業員などの位置を画像認識。吊(つ)り荷と建設物との接触や作業員の吊り荷直下への侵入といった危険な状況を検知し、警告することで、クレーン下の安全も確保する。
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